エピローグ

 警察けいさつ上層部じょうそうぶは、タロースを処罰しょばつしなかった。警察ロボットが暴走したという不祥事ふしょうじを公開したくなかったからだ。プラネタリウムで火事さわぎを起こしたのは、ロボットではなくて、凶悪犯のアケディアがロボットスーツで暴れたのだということにしたのである。


 でも、タロースは「それではオレの気がすまない」と言い、長谷川はせがわ警部けいぶ処罰しょばつを願い出た。

 長谷川警部は遠山とおやま部長と相談した結果、タロースだけでなく長谷川警部も一か月間の謹慎きんしんをすることにした。一か月の間、長谷川警部とタロースは警部の家に閉じこもり、今回のことを一緒いっしょ反省はんせいしようと決めたのである。


 一方、ココルの元にはとてもうれしい招待状しょうたいじょうとどいていた。


「ココルさん。学校の生徒たちを助けてくれてありがとう。感謝の気持ちをこめて、あなたを学校の生徒として歓迎かんげいします」


 学校長からの心のこもったお礼の手紙と制服せいふくが送られてきたのである。実は、前々から信人のぶとが学校側に「ココルを学校に通わせてやってください」と交渉こうしょうしていたのだ。そして、今回のココルの活躍によって、生徒たちの間でココルを歓迎したいという声があがり、ココルの中学校入学が実現したのである。


「やったね、ココル! 学校でたくさん友達を作って、楽しい体験をいっぱいしようね!」


「言っておくが、もう学校でスピーカー機能を使うなよ。みんなの迷惑だからな」


「うん! これからよろしくね、愛菜あいなちゃん! 勇治ゆうじくん! わたし、広い世界を見て、たくさんの人と友達になりたい。ロボットの友達もいっぱいほしい。もっと、もっと、人間の感情を知って、愛菜ちゃんと勇治くんが自慢じまんできるような家族になる!」


 真新しい制服に身をつつんだココルは、とても幸せそうにほほ笑み、ジャンプして愛菜と勇治に抱きついた。愛菜はうれしそうに笑ってココルの頭をなで、勇治はくさそうに「やれやれ。手の焼ける姉がいるのに、妹までできちまったか……」とブツブツ言っている。


 そんな様子を信人とバトラーはニコニコ笑いながら見つめていた。


「ココルは、人間の心とロボットの心、両方が理解できる天使のような子です。彼女はいつかきっと人間とロボットのかけ橋となってくれるかも知れません」


「そうだな。ココルと愛菜、勇治が、妻が夢見ていた『人間とロボットがパートナーになる世界』を作ってくれるとオレも信じているよ。これは、人間とロボットの明るい未来の第一歩なんだ」


 ココルが初登校した日は、抜けるような青空で雲ひとつない天気だった。


 もしかしたら、天国のこころがココルの最初の一歩を祝福しゅくふくしてくれているのかも知れない。信人は、三人ならんで歩くココルと愛菜、勇治の背中を見送りながら、そう思うのだった。



                                                     了

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ココル 翼のない天使 青星明良 @naduki-akira

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