Kという名の刺客。
糸乃 空
第1話 襲来。
ここ数日、付け狙われている。
長年の経験による勘が間違いなくそのことを告げていた。
背後に警戒の意識を飛ばしつつ重い木製の扉を開くと、眠たげな表情のマスターがカウンター越しに細い目を開く。
「1人かい?」
「ああ」
細めのグラスに落とされた大ぶりの氷がカランと涼し気な音を立てた。辛口のジンへトニックが注がれる。そこへ絞られたライムの香りがふわり、広がった。
乾いた喉をよく冷えた液体が滑り落ちてゆく。これから帰宅したあと、どう対処するのか思いを巡らせていた。マスターがクイと顎を向けてくる。
「Kに狙われてるのか?」
「ああ、1年ぶりの再開になりそうだ」
「しつこい野郎だぜ全く。くれぐれも気をつけろ、祝杯を用意して待ってるぞ」
背後に気を配り、一部の隙もなく帰宅する。取り立ててすることもなく、入念に戸締りをしてトレーニング部屋へ向かう。
連日の暑さに、今日は止めようかというサボり癖が顔を出しそうになるが、筋肉は裏切らないことを、体感的に知っている。いざという時に頼れるのは、普段から鍛えあげた己の筋肉だ。
軽いストレッチから始めて、12の行程を一つずつこなしていく。全身をバランス良く鍛えるためには、何かひとつ欠けてもダメだ。
体幹トレーニングの3セットめに入った俺は、マットにうつぶせになり体を横たえる。
プランク用意。始め。全身の筋肉に集中し、カウントダウンを始める。
10、9、8、7……気配だ、背後に気配を感じる。
これはKだ、間違いなくKだ、くそう!どっから入りやがった、しかも1番無防備な姿勢の時に、、この卑怯者が!!筋トレで流れる汗とは別の、冷や汗が脇の下を伝う。
迎え撃つ姿勢を取るべく、体制を立て直そうとした瞬間、肩甲骨の下に鋭い刺激が入る、くうっやられたか!
「この野郎許さんぞK(蚊)!!!!」
ぷーん。
Kという名の刺客。 糸乃 空 @itono-sora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます