鋼に映る父の思い・父に映る子の思い

包丁鍛冶の父とそれを店で売る子が言葉を交わす、ひとときを映したショートストーリー。
会話で表わされるのは刀ではなく包丁やハサミを打つお父さんの信条と、それを受けたお子さんの心情ですが……これで1477字ですか!? 濃密なんですよ、それはもう驚くほどに!

お子さんに刀を打たないのかと訊かれたお父さんの答には、読んでいるこちらの背中が伸びちゃうくらいの強い思いがあって、お父さんを誰より尊敬して、愛しているからこそのお子さんの思いがあって。正直、オチには震えましたね。

それは、これだけの文量にきっちり説明まで交えてドラマを成立させられる構成力があってこそ。著者さんは大阪の刃物屋さんで取材されたとのことですが、その成果がリアルの重みをしっかり作品に与えられているのもすばらしい!

読み手の方はもちろんですが、ぜひとも書き手の方に読んでいただきたいです!

(夏はサクサク! 短い4選!/文=髙橋 剛)

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