第4話 帰還と再会
シズが出ていった後のミラの部屋では、異様な静けさだけが残っていた。
「行ったか」
するとミラは、両手を頬に当て、部屋中を走り回る。
「ん~~~~~~~~~っ!!」
時折エビ反りの様に高く飛んだりして、ミラは全身で喜んだ。ミラはそのままベットへダイブすると枕に顔を埋め、声が漏れないよう小さく呟く。
「やった……。 初めての信徒ゲット!!」
『ピシャッ!!』
ミラの部屋に大きな亀裂が入る。転移門だ。先ほど彼女が作った物よりも大きく形も整っていて、ほぼ円に近い。
その中から出てきたのは、ミラと瓜二つの大人びた女性だった。その女性は、ミラを見つけるとすぐさま近づき、ベットに寝そべっているミラの横に並ぶ。
「はぁ~……。 もう疲れた。 神様なんてやるんじゃなかった……」
その女性は、とても衰弱しきっており、ベットに倒れるや否やため息などをつく。
ミラはその女性の様子を見ると、首に腕を回し、額同士をぶつける。
「
「ありがとミラちゃ―――――。 って、え"え"ぇぇぇぇえ"!!」
その女性はミラの言葉を聞くと青ざめ、ミラの両肩を掴む。そして、ニッと下手な作り笑いをしながらミラに問いかける。
「そのお手伝いしたお仕事って、もしかして今日お母さんがやってたこと?」
ミラはその女性とは正反対の輝かしいほどの笑みをし、元気な声で即答する。
「うん! ミラね頑張ったんだよ! 初めての信徒の為だから張り切っちゃった」
「O,Oh……」
女性のHPは0まで一気に削られ、気が遠くなっていく。気絶する瞬間のギリギリのところで必死に耐え、正気に戻るとミラに詳しいことを聞き始める。
その会話は傍から見ると尋問の様だった。当の本人は大事な母と会話ができ嬉しいようで、全く気にしていなかった。というより気づいていなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ミラの作ってくれた転移門から出たシズは、今回こそ無事な所に転移できたか確認する。
「ふぅ……。 良かった。 とりあえず、ここがジュエンクラーラでいいのかな」
シズの目の前に広がっていたのは、大きな建物が建ち並ぶ街道と噴水、それに屋台などで賑わっている街だった。シズが今いるところは転移門が数多く存在するエリアで、ジュエンクラーラの中央広場だった。周りを見渡せば至る所に転移門があり、そこで行き来する人たちが数多くいることが確認できる。
すると、目の前の通りからこちらに走ってくる2人の人影が見えた。もう辺りはすっかり夕暮れで、誰だか分からない。
「シズー!」
「トゥカ!!」
走ってきてくれたのは親友のトゥカだった。少ししか離れていないのに、なんだか久しぶりに会った気がしたシズはそのままトゥカに抱き着く。
「もうどこに行ってたの! すごく心配したんだから!」
「よかった。 無事見つかって」
「トゥカごめんね。 ちょっと色々あって……」
話を聞くと、トゥカは転移門から全然出てこないシズのことを心配してずっと探していてくれたらしい。それに最後に森で会った門番さんも手伝ってくれたらしく、発見があと少し遅れたら本格的にギルドに捜索願いを出しに行くところだったとか。
「あ、そうだシズ。 残念なお知らせなんだけど、実はもう神殿が閉まっちゃって……」
トゥカは耳と尻尾を丸くし、顔を下に向ける。トゥカは神殿が閉まるぎりぎりのところで、何とかスキルを譲渡してもらえたらしい。だが、譲渡する神にシズのことを聞いても、まだ来てないということで、どうやらまだ譲渡してもらってないと思っている。
シズは、トゥカの両手を優しく握ると、今まであったことを話す。
「あのね。 実は私、もうスキルは貰ってるの。 ちょっと不思議な神様に出会ってね。 だからそんな心配しないで!」
「えっ! そうなの!」
トゥカは度肝を抜かれたような顔をし、耳も尻尾も一気に逆立つ。シズは、証拠として『観察眼』のスキルを使用して見せた。
「すごい。 目が光ってる……」
「でしょ! だから帰ろう」
「うん!」
彼女らは、門番さんにこの後の処理を任せ、転移門へと急ぐ。夜になってしまうと、魔獣の活動が活発になり、少女2人なんて一溜りもないからだ。
そして2人は、手を繋ぎ、今度ははぐれないよう一緒に転移門を潜るのだった。
今日、『観察眼』を使って見えたものに、不思議な箇所があった。敢えて何も口にはしなかったが、気になってしょうがない。
【トゥカ・リティナ】
職業:村人
種族:獣人種(狐) / 年齢:15 / 性別:女
Lv.01(上限Lv.99) / Exp:110 / 150
HP:105 / 105 MP:06 / 21
STR:32 ATK:28
DEF:14 AGI:52
LUK:11
所持スキル:『
経験値が入っている。これは
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