第8話 新たな家族

ミトから話があると言われ家の中で聞くことにした2人は、中に入れるとテーブルまで案内する。

そして、席に着くや否やミトが口を開く。


「それで話というのはこの子。 ミラのことなの」

「ミラちゃん?」


引っかかることと言えば、ミラが勝手にシズにスキルを与えたことだ。ミラは自分が原因だということをすっかり反省している様子はなく、用意されたミルクを美味しそうに飲んでいる。


「上手いっ!!」

「ミラッ!」


ミルクをおっさんのように飲み干したミラに、ミトが喝を入れる。ミラはなぜ叱られたのか分からずに、えへへと苦笑いする。呆れたミトはミラの代わりにシズへ謝罪をする。


「はあ~……。 とりあえずシズさん。 この度はこちらの不手際のせいでご迷惑をおかけして申し訳ございません。 ほら、ミラも謝る!」

「ご、ごめんなさい」


ミトはシズに向かい何度も頭を下げる。それと同時にミラの頭にも手を伸ばし、無理やり頭を下げさせる。


「母様痛いよ~」


頭をテーブルにぶつかりそうなほど押し付けられる姿を見て、シズもさすがにやりすぎだと思い止めに入る。


「も、もう大丈夫ですから! 私も別に何ともないことですし」


すると、ミトが目を見開く。一瞬だったが、その目は先ほどの目の色とは違うように見えた。トゥカもそれを見逃していなかった。トゥカは獣人種なので動体視力なら人一倍鋭いのだ。


「“観察眼”……?」

「あら。 トゥカさん、よくわかりましたね」

「シズのを1度見ていますから当然です!」


トゥカは尻尾と耳を立て、ミトに褒められた事を喜んでいるようだった。シズはなぜ今、観察眼を使ったのか不思議に思い自分でも確認してみることにする。


「(観察眼……)」


シズの目が黄色に輝く。そして、周囲を確認するも、トゥカとミラのステータスには前回見た通り変化はなかった。ミトに関しては、ミラと同様でほぼ何も見えない。これが以前ミラが言っていた神域者という者なのだろうか。

そして、最後に自分のステータスを確認する。


「えっ……」


そこに映っていたのはいたのは、昨日夢で見た内容とは大きく異なるものだった。




【シズ・マークラス】

職業:村人

種族:人種 / 年齢:15 / 性別:女

Lv.08(上限Lv.99) / Exp:0700 / 3400

HP:540 / 540 MP:0 / 0

STR:180+α ATK:096+α

DEF:020+α AGI:114+α

LUK:015+α

所持スキル:『観察眼Lv.01(上限Lv.01):発動中』『睡眠学習Lv.03(上限Lv.10)』『初級剣技・・・・Lv.01(上限Lv.5)』

(※+α …… 初信徒ボーナス。中身は不明)




明らかにおかしなレベルの上がり方をしたステータスにシズは体が固まってしまう。普通の人なら、Lv.1上げるだけで相当な苦労をするものなのに、シズは一晩で駆け出し冒険者以上のステータスを手に入れてしまったのだ。

ミトは改まって、今回のことの重要性について話し始める。


「お分かりですか。 シズさんの持つスキル“睡眠学習”とは、特殊ユニークスキル。 つまり、この世界の均衡をも崩す可能性があるスキルなのです」


この話に付いていけていないトゥカは、何がどうなっているのか分からずに、シズに現状を求める。


「シズ……何があったの?」


固まっているシズは、トゥカに話しかけられたことにより我に戻り、ゆっくりとトゥカの顔を見る。


「レベルが……レベルが一気に7も上がった……?!」

「えっ! 冗談でしょ??」


未だ信じていないトゥカに対し、首を大きく横に振る。ミトにも確認を取るが、結果はシズと同じだった。あまりの友人の成長ぶりに言葉も出なくなってしまう。


「トゥカさんのスキルの数も種類も稀にみるものですが、シズさんのは別格です。 ステータスの成長速度もそうですが、自分でスキルさえ身に着けてしまう・・・・・・・・・・・・・・・・ほどですから」


シズは改めて自分のスキルを確認すると、ミトの言った通りスキルの欄が1つ増えていることに気づく。


「剣技って……私、夢の中でしか剣をふるってないですよ。 しかも1回しか……」

「夢だからこそ何でもでき、それをあろうことか現実のものにしてしまった。 つまり、睡眠学習のスキルにはその名の通り、夢の中で学び身に着けてしまう・・・・・・・・・・・・・・んです」

「そんな無茶苦茶だよ……」


シズは、これからこのぶっ壊れのスキルと共に生きていかないといけないと分かると気が遠くなる。するとミトが人差し指を顔の前にピンと立てる。


「ここで一つ提案があります。 スキルの回収はもう無理なので、あなたを監視下に置くことにし、その監視役としてミラをあなた達の側に置いてくれませんか? この子ならそこら辺の騎士や冒険者より、よっぽど強いので心配は無用です」


シズはミトが出してきた提案に、今までのことを忘れそうになるぐらい心が躍る。


「えっ! 逆に良いんですか?!! でも本人の意思は―――」


ミラは親指を立て、こちらに向けてくる。


「別にいいぞ。 てかその為に来てるんだし」


どうやら当人は理解しているようで、何も問題がないようだった。それどころか、少し頬を赤らめて照れている。

その可愛らしくも子供らしい様子を見ると、シズはまたもミラに抱き着く。


「おぉ~神よ~!」


そしてミトは最後にシズに対し忠告をする。


「た・だ・し! 睡眠学習についてはあまり口外してはいけませんよ」

「えへへっ。 わかってますよ~」


先ほどの緊張はどこに行ったのか分からないぐらいシズの顔がニヤついている。その頃トゥカは半放心状態から戻り、親友への不安と、自分がいない間の心配がなくなったことへの安心感を抱いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る