第2話 神域者・ミラ
森の中をしばらく走ると、大きな森の広間のようなところに出た。
ここは最近出来た
2人は転移門に着くや否や、目の前にいる人だかりに目をやる。
「えぇー! これみんな私たちと同じ目的の人たちだよね」
転移門の前にいる人達は子供が多く、近隣の村はここにしか転移門がない為、皆挙ってここに来たのだ。
それを見たシズが申し訳なさそうにトゥカに謝る。
「ごめんねトゥカ。 私のせいで……」
トゥカはそんなショボくれたシズを慰めようと再度手を握りしめる。
「いいのいいの! さっ! 私達も並ぼう」
当然怒ってくるだろうと思っていたシズは、いつもより優しいトゥカを不思議に思う。だが、シズはたまにはこういう日もあるだろうと気にしないでおくことにした。そして、シズとトゥカは長蛇の列に並び、自分たちの番を待つ。
小一時間ほどすると、ようやく目の前が開き転移門が彼女らの前に現れる。大樹の根元に作られたその転移門は、見ているだけで吸い込まれそうな感じだった。
「これ本当に通るの? 食べられない?」
「何言ってるのシズ。 昔にも通ったでしょ」
トゥカが言う昔とは約10年前もの前の話。シズとトゥカが両親に連れられ、マイス村に住み始めた時の話だった。
「いや昔って……。 私覚えてないし」
「と・り・あ・え・ず! 大丈夫だから、門番さんに通行証見して通るよ〜」
そう言うとトゥカは門番にポケットから取り出した通行証を見せ、転移門の中へと入って行った。
「置いてくなんて酷いよー!」
シズも慌てて鞄の中から通行証を取り出し、門番に見せつける。
「行ってもいい??」
「あぁ良いぞ。 頑張ってな」
門番もこの日のことを知っているので、シズや他の子にも応援の声をかけたり、手を振ったりしている。
そして、軽くお礼を言うと目を閉じ、勢いよく転移門へ飛び込んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『――――――――――。』
「……ん? あれ?」
転移門に飛び込んだシズが、異様な静けさに不思議に思う。普通は賑やかな話声や、街の賑わった音が聞こえてくるはず。なのにそれが一切ない。それどころか人気すらない。
シズは閉じていた目をゆっくりと開け始める。
「なにここ!!?」
目の前に広がっていたのは、上も空も星空の海。その中にポツリとあるベット。そのベットはよくお城とかに置いてあるロイヤルベットだ。
「何でベットだけあるの……。 てか誰か寝てる?」
そのベットには、1人の少女が眠っていた。彼女は何故ここにいるのか。そして彼女は誰なのか確認すべく、肩を叩き起こそうとする。
そして、肩を叩く直前。眠っていた少女が目を開けこちらを凝視する。
「う……」
「う?」
「うわーーーーーーー!!」
「えええぇぇぇぇぇええ!!」
突然悲鳴を上げた少女に動揺し、シズもつられて叫んでしまう。少女はベットから飛び出ると、シズのいる反対方向のベットの端に隠れ、鼻から上だけ出してこちらを再度凝視する。
「誰だお前。 どこから入ってきた……」
「それはこっちのセリフですよ。 ここは何処なんですか?」
質問を質問で返してしまい会話が一旦途切れる。
すると少女が立ち上がり、シズの横に詰め寄ってくる。彼女は見た目は人間そっくりで、綺麗な緑がかった色の髪を横にまとめ、サイドテールにしていた。あまりの美しさに目を取られていると、小さな腕がシズの両頬に触れる。
「お前人間種だな。 ここは
「神……。 ミラ様……?」
「そうだ。 神様だ! もっと讃えても良いのだぞ」
自分のことを神だと威張るその少女は、仁王立ちをし、腕を組み、顔を少しあげ、シズの前に堂々と立ち尽くす。だが、シズよりも頭一つ小さいその少女に、シズはどうも神々しさを感じられずにいた。
「あの、私シズです。 シズ・マークラス。 今日、神殿で『スキル』の譲渡があり、それを貰いに行く途中なので早く出してもらえませんか? 友達も待っているので……」
ミラは、シズの話を聞くとそのまま体ごと傾け考えだす。
「ん~。 スキルの譲渡……どこかで……」
そして、何かに気が付いたのか体を元の角度に戻す。組んでいた腕を解き、指をシズの方へ向ける。
「思い出した!
「え、そうなんですか?」
「何なら今ここでやってく? 時間はそんなにかからないぞ」
自身満々気なミラの提案に、少し嫌な予感がしたシズは、改めてミラの姿を見て考えだす。
「(見た目は子供だし、ちょっと不安だな……。 しかも本当に神かどうかも怪しいし)」
少し茫然としすぎたのか、ミラがシズの頬をぺちぺちと叩く。
「どうした? 始めるぞ」
ミラの言葉にハッと我に返る。そして、ミラの手を見ると髪の色と同じ緑色に光っていた。それはゆっくりとだがシズに近づいていた。
シズはその光に触れないよう、ミラの腕を掴む。
「ちょちょちょ、待って! やっぱこういうのって正規の神にやってもらった方がいいんじゃ―――」
「大丈夫大丈夫! 痛くないから、ほら力抜いて~」
「発現が全然大丈夫じゃないですー!」
抑えていた腕は、シズの手を押し切るようにどんどん近づいてくる。この小さな少女のどこにこんな力があるのかと考えていると、シズの手が汗で滑り、とうとうミラの手がシズの頭に触れた。
「あっ……」
「“少女、シズ・マークラスに神々の力を与える”―――“
ミラが唱え終わるのを聞きくと、シズはもう諦めの姿勢に入り、地面に座り込んでいた。
そして、一瞬眩いほどの光が輝いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます