友人の自殺、というショッキングな出来事に冒頭からグッと掴まれ、その後明かされていく人間関係や心情の流れがとても丁寧でなおかつ読みやすく、読み始めたら一気に最後まで走り抜けてしまった。ミステリー的な要素も楽しめるし、登場人物たちの心の機微にもしっかりと入り込めて、読んで良かったと思わせてくれる作品です!正解とは、何だったのか。読み返すたびに、その答えは変わっていくような気がします。
作者が入念に調整した構成が鋭い輝きを放つ傑作。二重(数え方によっては三重)の苦悩を飲み込みつつ、ひたすら十字架を背負って生きる主人公の姿は決して他人事ではない。『悲劇』それ自体がペルソナを奪われ、幕を引きちぎられ、挙げ句にステージをもなかったことにされる無限の喪失……まさに現代人全てが抱え得る漂白された自我の痛みだ。新たなルームシェアは心理の箱庭ではなく氷の棺桶となる……。
主題と内容が確かに秀逸で、すごく凝った形になっていて、読後は感嘆符が飛び交うのですが、たぶん、一生かかっても、自分は正解できません。
短い話ながら濃いストーリー、実際の文字数より多く感じました。
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