第2話 堕ちる、花びら。

 それからも、何度かあの人を見た。遠くからあの人を見つめているだけのものだった。・・・でも、


 その度に嬉しくて。


 また見たくなって。


 一度でもいいから、話をしてみたくて。


 その間の時間が、とても楽しみになった。




 けれど―――その時間は、すぐに色を失った。力尽きたように、花びらが地面へと堕ちた。






 もう何度目かのあの人との出会い。

 また会えるんだと、歩く足が弾む。いつもの道を、今にも踊り出しそうな足取りで進む。

「はやく、はやく」と心が急かしてくるのを抑え、あの人がいる場所に行った。


 そして―――見た。あの人が、別の子といるのを。私の足が、ピタリと止まった。


 すぐに悟った、あの子があの人の想い人だと。

 時おり見せていた寂しげな表情は、全てあの子を想っていたのだと。


 そう気付いたら―――胸が、きゅっと締まって痛んだ。

 苦しくなって、泣きそうになった。

 どうすればいいか分からなくて、涙が零れた。




 これが『―コイ―』の終わりだと、すぐに気付いた。










 終

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舞う花びら、堕ちる花びら。 薄紅 サクラ @Ariel191020

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