エピローグ

 僕は書いている。

 物語を書いている。


 必ず何かを口にして、眠たい朝にコーヒーをすすらずにはいられないように。

 避けられぬ物語を書き続けている。


 あるいは、あなたもそうだろう。

 生きとし生けるすべての人は、この世に生を受ける瞬間から、その手に一本のペンをもって生まれてくるのだから。


 だとすれば、この世は、すべての人々によって描かれた、途轍もなくスケールの大きな合作だろうか。それとも単に個人の作品に過ぎないのだろうか。あなたはどう考えるだろう?


 僕の意見は聞かなくていい。借り物に惑わされる必要はない。それを誰かが間違いだと言ったとしても、本当の正否を決められるのは、あなた以外にないのだから。世界が合作だとしても、物語の細部にひそむ、あなただけの筆跡は、決して他の誰も知ることのできない黒い箱だ――。


 おっと、これもまた僕の意見に過ぎないのだった。


 畢竟、僕に言えることなど何もありはしない。

 この世界に散らばった謎は星のように多く、宇宙よりも広く、あるいは個人的に閉ざされているものだ。


 さあ、とやかく言わずに筆を走らせよう。間違えたなら、何度でも書き直して。より良い作品へと育ててゆこう。


 そのために必要なことは、きっと、もうあなたも知っているだろう。


 では最後に。

 愛しい人の住まう遠い世界の物語から。

 ひとつ言葉を拝借しよう。


 孤高の真実は、秘められるゆえに貴いものである。

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リライト 笹野にゃん吉 @nyankawa

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