384.ピクニック参加者は

「トワくん、ピクニックでなにが食べたい?」


 持って行く料理を仕込んでいると、ふいにユキがそんなことを聞いてきた。

 そうだなぁ……。


「定番と言えばおにぎりとかサンドイッチとかだろうけど、それは作るんだろう?」

「うん。あと唐揚げとかナポリタンとかも持って行くよ」


 そうなってくると、本当に食べたいもののリクエストになってくるんだが……。


「……ピクニックに持って行くようなもので食べたいものは特にないかな」

「ああ、やっぱり? 定番メニューをそろえたら、それで満足かなって思ってたんだ」


 ユキも同じような考えではあったようだ。

 あまり変わったものを持ち込んでも、ピクニック感が失われるからな。

 ゲーム的にはなにを持ち込んでも大丈夫なんだけど。


「それじゃあ、持って行く料理はこれで大丈夫だね。あとはどれくらいの数が必要か、だけど……」

「そっちもあまり必要ないと思うぞ。いろいろと声をかけてみたけど、みんな忙しいみたいだったし」


 そう、今回のピクニックだが『ライブラリ』以外の参加者はいない。

 教授や白狼さん、鉄鬼などはどうも新規レイドの攻略に忙しいようだ。

 またリクもそちらの手伝いに入っているらしい。

 それから、うちの妹様であるハルはというと……おとなしく受験勉強の真っ最中だ。

 あいつは今年受験ということで真面目に勉強をしている。

 たまに息抜きで数時間程度ログインしているらしいが、その程度のようだ。


「それじゃあ、ハルちゃんも来ないんだ」

「らしいぞ。その時間はハルのパーティメンバーで集まってなにかするんだと」

「そっか。それなら仕方がないね」

「だな。あいつも受験勉強、がんばってるし」

「私たちと同じ高校を受けるんだっけ?」

「どうもそのつもりのようだな。それなら大して難しくはないんだけど」

「念のためじゃないかな。私たちだって、中学三年生の今頃は勉強してたし」

「……それもそうか。まあ、そういうわけなんで、参加するのは五人だけだ」

「そっかー。お料理作りすぎたかも」

「大丈夫じゃないか? 別に傷むものじゃないし」

「なんだけどね。やっぱり、せっかくなら用意したときに食べてほしいよ」

「そんなものか」

「そんなものだよ」


 俺の場合、料理は適当だからな。

 薬の方は、常備しておくものだからいつ使うかは持ち主次第だし。


「ともかく、料理はこれで終わりか」

「終わっちゃったね。飲み物も終わってるし、準備終わっちゃったな」

「さて、どうしたものかな」

「どうしたものかなぁ」


 完全に手持ち無沙汰になってしまい、俺たちは顔を見合わせる。

 実際には店売りのアイテムを作る作業があるのだが……まあ、それはいつもの日課だしおいておこう。


「……せっかくだし、どこかに出かける?」

「どこかって、どこに行くんだ?」

「うーん。そう言われるとあまり思いつかないね」

「俺たちの場合、行動範囲が狭いからな」


 観光という意味でも休憩という意味でも、あまり行きたい場所はない。

 大抵の場所は行っているし、今更……という感じなのだ。


「そうだね……行きたい場所、思いつかないや」

「だなぁ。俺らの行動範囲、本当に狭いな」

「教授さんみたいに広ければ、どこかいい場所あるのかもね」

「教授は広すぎだろ」


 そのあとも適当に談笑しながら時間を潰す。

 ある程度時間が経ったら、のんびりと日課の売り物作成をして一日の終了だ。


 最近はプレイ時間を制限しているのもあってまったりとした時間をすごすことが多い。

 たまに本気モードで挑まなくちゃいけない依頼が飛んでくるけど……それはまた別の話だ。

 さて、ピクニックの日まで何事もなければいいんだけど。

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Unlimited World ~生産職の戦いは9割が準備です~ あきさけ @akisake

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