後日談その5 その後のショートストーリー

383.ピクニックに行こう!

待たせたな!

Unlimited World再始動!

短編を可能なら一週間に一本ずつアップしていくぜい!

**********


 Unlimited Worldが始まって二度目の夏休みが終わったある日。

 クラン『ライブラリ』のみんなが集まっている席で、俺の恋人ユキがこんなことを言い出した。


「ピクニックに行こう!」

「ピクニック?」


 この発言には誰もが驚いたようで、続きを促している。


「夏休みもみんな忙しかったよね? イベントも終わってようやく休める時間ができたんだし、みんなで遊びに行こうよ」

「……ああ、今年の夏休みも忙しかったなぁ」


 去年の夏休みは宝探しに防衛戦イベントだったっけ?

 今年は遺跡調査と防衛戦だったが……生産職は特別忙しかった。

 特に防衛戦。


「……確かに、防衛戦は目の回る忙しさだったな。俺は準備しか参加していなかったが」


 そんなことを言うのは、『ライブラリ』所属の調薬士ウォルナット。

 本業は大学生で、冬に俺がログインできなくなっている間に『ライブラリ』を支えていてくれた。


「おじさんはまだ大丈夫だったけどねぇ。役柄的にそこまで出番も多くなかったから」


 これはおじさんの弁。

 正式なキャラクター名は別なのだが、みんなにおじさんと呼ばせている変わり種のプレイヤーだ。


「それにしてもピクニックとはのぅ。そんな言葉を聞くのは何年ぶりか」


 じじクサイセリフを述べるのはドワン。

 正式サービス開始時からいる鍛冶士で、大学生なのに老人ロールをするプレイヤーだ。


「ピクニックいいねー。ボクは行きたいなー」


 次はイリス。

 ドワンと同じく初期からいる木工師。

 今年で中学三年生のはずだが……受験は大丈夫なのかな?


「うん、たまにはいいんじゃないかしら? それで、どこに行くかは決めているの?」


 最後は『ライブラリ』のまとめ役、柚月。

 立ち位置的には実質的なリーダーである。


 なお、『ライブラリ』にはもうひとり、裁縫士の曼珠沙華が在籍している。

 だが、彼女は別のクランのお抱えに近く、今日もそっちに行っているため不在だ。


「えーっと、妖精郷に行こうかなと思います」

「妖精郷かー。封印鬼をクリアしてから一回も行ってないねー」

「そういえば自由に行けるんじゃったのう」

「ピクニックの場所としては悪くないわね」


 どうやらイリス、ドワン、柚月の三人は乗り気なようだ。


「封印鬼か。俺はクリアしていないからパスだな。お前たちだけで楽しんでくるといい」

「おじさんもちょっとパスかな? リアルのお仕事があるからねぇ」


 ウォルナットとおじさんはパスと。


「あ、ごめんなさい。ほかの場所がよかったですか?」

「ああ、いや、そうじゃない。大学の後期日程がもうすぐ始まる。その準備もあるからあまり時間の余裕がないんだ」

「そうなんですね……。やっぱり大学って忙しいですか?」

「そうだな……学校と学部によるとしか言えないな。ただ、暇な大学には行かない方がいいと思うぞ。俺の独断と偏見だがな」

「そうなんですね。大学選びの参考にさせていただきます」


 そう、俺とユキも高校二年生の二学期を迎えた。

 そろそろ大学受験に向けて準備を始めなくてはいけない時期なのだ。

 まずは大学選びなのだが……これがなかなか難しい。

 先生にもいろいろ聞くが、決め手に欠けるというか。


「トワ、お前はどうなんだ? さっきから黙っているが?」

「え、俺? そうだな……どの学校を選ぶべきか迷っているというか」

「……その話じゃないだろ。ピクニックの件だ」


 ああ、そっちか。


「もちろん参加するさ。当たり前だろう」

「……それもそうか。それと大学選びで悩んでいるなら俺やドワンに相談してみろ。多少ならアドバイスできるかもしれないぞ」

「まあ、そうじゃの。といっても、地元で進学したいのか都会に出てきたいのかで変わるがのう」

「あー……できれば地方の方がいいな。俺の場合、リアルだと身体が不自由な面があるから」

「……そういえばそうだったな。まあ、気軽に相談してくれ。先輩としてアドバイスはしてやる」

「サンキュー、クルミ」

「俺も先輩には世話になったからな。それをまねしているだけだ。それじゃ、俺は工房に戻るぞ」


 それだけ言うとウォルナットは席を立った。

 ピクニックに参加しない以上、会話に参加しても仕方がないということだろう。

 さて、ここからは具体的なピクニックの話だな。


「日程ですが、今度の土曜日はどうでしょう?」

「あー、今度の土曜日はパス。友達と出かける約束をしちゃったのよね」

「そうですか……それじゃあ、次の土曜日は?」

「私は大丈夫よ」

「ボクも平気ー」

「儂もじゃ。トワは……聞くまでもないな」

「ユキが暇なんだから、俺も予定が空いてるに決まってるだろ?」

「じゃあ、来週の土曜日ということで。ピクニックに持って行く料理は私とトワくんで準備しますね」


 こうしてピクニックの日取りと場所は決まった。

 ほかに誰か行く人はいないか誘ってみることにしたが……どうだろうな?

 攻略組は夏休み終わりのアップデート検証に忙しそうだし、きてくれるだろうか。


 ともかく、せっかくのピクニックだ楽しむとしよう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る