更新遅延のお詫び&おまけ:そのころのシューティングスター
本日2話目の更新です
よろしければひとつ前のお話からお読みください
3月から更新遅延してたお詫びの気持ちを込めて追加したショートストーリーです
本編とは全く関係ないのでお気楽にどうぞ
あいつらの出番も用意しておかないとね!
**********
「なあ、ロックンロールよ、俺たちもそろそろ次のステップに進まないか?」
「……ターフ、その台詞、この間も聞いたって」
ここは俺たち『シューティングスター』のクランホーム。
その一角に、クランの主要メンバーである俺ことロックンロールにターフ、びふーが集まっての会議……というか雑談中なのである。
「いや、だってさ。世間はオーディン討伐で盛り上がってるんだぜ。俺たちもここらでどーんと」
「どーんとどうするんだよ、ターフ。俺らじゃオーディンなんてきつすぎるっしょ」
「びふー、そうだけどさ。やっぱり、クランとしても何かやりたいじゃん」
クランとしてか。
確かに何かやりたいんだけどなぁ。
「まず、オーディン戦とかどう考えても無理。クランとしての戦力っていうかタンクの硬さが足りない」
「だよな。ガンナー系のタンクってHP係数低めだもんな」
「でだ、そう考えると、どこかのレイドなんだけど……レベル80レイドはまだまだ無理だ」
「そうだな、レベル80に到達しているメンバーってレイド組めるほど多くないもんな」
「さて、ここまでを踏まえて。クラマス、なにかいいアイディアはない?」
えー、ここで俺に聞くの?
レベル80レイドは無理で、そうなると75レイドとか70レイドになるけど、その辺ってもう何回か行ってるしなぁ。
そう考えると目新しいイベントじゃないし、どうするかな……。
「……あ、そうだ」
「お、クラマス。なにかいいアイディア、思いついた?」
「フェンリル入手に行ってみない?」
思えばこれが地獄の始まりだったかもしれない。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「死ぬ! レベル90のフェンリル、マジで死ぬ!」
「なにさ、魔法だけじゃなくお供まで召喚するって! あんなん倒せるわけないじゃない!」
「ちょっとクラマス! どういう判断でフェンリルクエストなんて選んだのさ!」
「……えー、なんとなく?」
フェンリルのレベルは、挑戦するパーティメンバーの中からもっとも高いプレイヤーのレベルプラス十なので、今回俺たちが挑んだのはレベル90のフェンリルとなる。
……いやー、強かったね!
物理も魔法も強いし、ある程度ダメージを与えたら、お供の狼まで召喚してくるし、あんなの倒せるわけがないじゃない。
……今回の企画、失敗だったかな。
「やった! フェンリル入手できた!」
俺たちクラントップ勢が落ち込んでいたところ、そんな声が聞こえてきた。
声の主は、クランの中でも中堅どころのパーティだったよ。
「お、お前たち、フェンリルに勝てたのか」
「あ、ロックンロールさん! 俺たちなんとか勝てましたよ!」
「すごいなあ。俺たちなんてフルボッコにされたよ……」
「……あー、レベル90じゃどうにもならないですよね」
「あ、知ってたの?」
「前にレベル90フェンリルの動画を見ました。いろいろと激しすぎて何が何だかさっぱりでしたけど」
「俺らもそんな感じだったよ。とりあえず、入手おめでとう」
「ありがとうございます!」
その後も、中堅どころをメインにレベルが60から40くらいのクラメンたちがフェンリルを入手できていた。
あ、幻狼の腕輪だけはいろいろ使えるから、各自で事前に入手していたみたいだよ。
「……この様子だと、俺らもレベル低いうちにフェンリル入手しておけばよかったのかな」
「それを言うな、ロックンロールよ。泣きたくなってくるから」
「精霊もユニコーンもいるから、戦闘用の眷属には困ってないけど、やっぱりフェンリルほしいよなー」
「だなぁ。こうして考えると、トワさん、やっぱりすごいわ」
「だよなぁ。あの人、いろいろおかしいと思うけど憧れるよな」
トワさんの武勇伝は事欠かないが、低レベルでのフェンリルクリアなんかも含まれている。
実際、この様子だと、フェンリルはある程度レベルが低い方が楽に勝てる気がするけどね。
「んー、今度、トワさんに五重刻印の銃依頼してみるかなー」
「……やめとけ、クラマス。きっと、俺たちが維持できるような値段じゃないから」
「あ、やっぱりそう思う?」
「そうに決まってるっしょ。一回使うだけで耐久力がほとんど消し飛ぶような武器だよ? 修理費用だけでどれだけの資産が消し飛ぶか……」
「だよねー。あー、どうにかしてフェンリルゲットできないかなー」
とりあえず、フェンリル挑戦はしばらく続けることにしたけど、やっぱり入手できるのは初心者を抜け出したくらいのメンバーから中堅どころまでなんだよねぇ。
古参メンバーはレベルが高くなりすぎてて、フェンリル強すぎ問題が発生しているという惨状。
どうしてくれようかな。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、トワさん。お久しぶりです」
「ん? ロックンロールか久しぶりだな」
気晴らしにひとりで狩り場に来たらトワさんと遭遇した。
トワさんは……ユキさんと一緒みたいだな。
「ユキさんもお久しぶりです」
「こんにちは、ロックンロールさん」
「ロックンロール、こんなところでなにをしてるんだ?」
「……あー、聞いてもらえます? 愚痴になっちゃいますけど」
「手短に頼むな」
手短に、と言うことなので、要件だけをかいつまんで説明した。
俺の説明を聞いてくれたおふたりなんだけど、なんともいえない顔をしてるなぁ。
「すまん。俺たちは、低レベルのうちにフェンリルを入手してしまったから、その苦労がよくわかってないんだ」
「低レベルでも結構きつかったから、今だともっと大変なんだよね、きっと」
「大変っすよ、ほんと……」
どうやったら、あれに勝てるのか。
本当に教えてほしいよ。
「……まあ、あれだ。乱戦になるって言うんだったら、ライフルを使うのは諦めてハンドガンをメインに戦うしかないんじゃないかな?」
「ですよねぇ。ただ、ハンドガンだと、やっぱりダメージが少なくって……」
「……そうなの、トワくん?」
「攻撃力は低いけど、攻撃回数は多いから近接戦ができるならそこまでDPSは下がらないはずだぞ。素材を持ち込んでくれるなら、新しい銃の作製も請け負うし」
なに!?
トワさんに銃を作ってもらえる!?
「え、マジッすっか!?」
「今なら依頼がそんなにないから大丈夫だぞ。刻印装備は作り飽きたからいやだけど、普通の装備だったら作るよ」
「やった! それじゃ、素材採取に行ってきます!!」
「ああ、気をつけてな」
さっきまでは気晴らしに弱いモンスターを倒すつもりだったけど、トワさんに銃を作ってもらえるならそんな時間はない!
ヒマしているクラメンをかき集めて上位素材を集めに行かないと!
……でも、トワさんたちって、あのフィールドになにしに来てたんだろう?
―――――――――――――――――――――――――――――――
「……で、素材を集めたはいいけど、どれだけの銃を作ってくれるのかは聞いてなかったと」
「本当に申し訳ない」
「クラマスらしいなぁ。ま、請け負ってもらえるだけの数でいいんじゃない?」
暇だったクラメンを集めた結果、大量の素材が集まった。
その結果、トワさんに頼める銃の数を聞いてなかったという致命的な問題が見つかってしまったのだ!
「まあ、上位素材はストックしていて損はないけど。ああ、新しい武器か。やっぱりうれしいよなぁ」
「わかるわかる。攻撃力が大差なくても、新しい武器ってだけで心がおどるよな」
「だよなー。トワさんに依頼できる権利を持ってきた俺のことを褒めてもいいんだよ?」
「……ぶっちゃけ、たまたまトワさんと遭遇しただけじゃん?」
「ぐはぁ」
そうだけどさ!
そうだけどさ!!
「まあ、素材は集まったんだし、銃の発注に行ってきてよクラマス」
「クラマス、できれば素材の最大数まで受注してもらえることを祈ってるぞ」
「……ちくしょう、頼むのは俺だと思って!」
確かに頼むのは俺なんだけどさ!
ここでターフやびふーと遊んでいても仕方がないし、発注に行ってこよう。
「え、トワさん、今日はもうログアウトした?」
「そうみたいね。スレイプニルの育成に行った後、そのままログアウトしたみたいよ」
そんなぁ、せっかく勢いこんできたのに。
「依頼の相談なら預かっておくけどどうする?」
「……いえ、後日またきます」
「そう。それじゃ、そうしてもらえるかしら」
「はい。ありがとうございました」
なお、依頼のほうは、後日素材の最大数分で請け負ってもらうことができた。
最近だと、もう一ランク上の装備品ばっかり作ってたらしくって、息抜き代わりにちょうどいいとか。
トワさんはなんだかんだ言っても可能な限りの技術を使って装備を仕上げてくれるからありがたいよね!
そして装備もできあがったある日、夏休みのアップデート予告が発表された。
「クラマス、これ、みてみろよ」
「なになに」
「フェンリルのレベルアジャスト機能だってさ。今度から、フェンリルに挑むときのこっちのレベルをある程度調整できるらしいぜ」
「なにその神アプデ」
「まあ、レベルを下げると攻撃力やHPも下がるらしいけど……これならフェンリルもいけそうじゃね?」
「よし、夏休みこそフェンリルをゲットしよう!」
夏休みの目標はこれで決まりだ!
俺たちの戦いは今から始まるぜ!
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Unlimited World ~生産職の戦いは9割が準備です~
これにて本当に閉幕です。
皆様ご拝読ありがとうございました。
最後がシューティングスターかよ! と思われる方もいると思いますが、これはこれで自分らしいかなと。
……ぶっちゃけ、これは最後のおまけですからね。
今後はUnlimited Worldについては数ヶ月の休暇をいただき、その間にいくつか短編を書きたいところ。
あと、ケットシーの王国。
どうプロットを組んでもイシ○ガルド復興になってしまうあれ。
……お蔵入り感が半端なくなってきたなぁ。
さて、これ以上の話は近況ノートのほうに書かせていただきます。
それでは、よろしければそちらもご覧ください。
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