第五章 分岐点

   0


 暖かかった。

 例え、言葉が通じなくとも、心が通じていると思えてしょうが無かった。


 こんなにも、優しく微笑んでくれる彼が……とても、愛おしかった。


   1


 竹林の先。

 草木が生い茂始めた少し先。


 掻き分けた場所で見つけたのは、彼にとっての始まりの友であるアイリスだった。

「やっぱり……来てたんだね」

「――ッ!」

「うわっ、とと」

 小型のセルリアンのアイリスは、フレンズ達に聴く印象とは違い人懐っこい子犬のようにマキの胸元に飛び込んできた。彼は少し蹌踉けながらも、上手く抱き留めて勢いを殺すように時計回りに一回転躰を回す。

 小さく小刻みなステップで体制を整えて、彼は改めてアイリスに抱擁で友情を確かめるのだった。

「――! ――!!」

「うんうん、僕も君に会いたかったんだ。でも、良く此所が解ったね」

「――?」

「それはこっちの台詞だって? あはは。何でだろうね、でも此所に来れば君に会えるって……何故かそう思えて仕方が無かったんだ」

「――ッ!!」

「あーこらこらっ、そんな擦り寄らなくても!」


 フレンズにとっては、矢張り忌むべき存在なのだろう。過去を遡っても、彼等とフレンズ達は喰うか殺すかという殺伐な立ち位置に居た。それでも、人間がフレンズ側に付く事と、仲介人として立つのとではこれ程までに違うのかという程に、彼という存在は辺りの環境を良くも悪くも歪めていた。

「よーしよしよし、折角だし、少しお話でもしよっか」

「――!」

「そうだねぇ、それじゃ……」


 木に腰掛け、彼はフワリフワリと今までの出来事を語り始める。


 哀しい事もあったが、楽しい事もあった。

 多くの発見があって、多くの出来事があった。

 多くの出会いをして、多くの知り合いを持った。


 何でも良かった。

 今彼にとっての安息の時間は、アイリスとの密会に置いて他に無かった。

 セルリアンで在りながら、彼の言葉を正面から信じた、大切な友人。


 そんな存在を、彼は買ったばかりの玩具を大事に大事に扱うかのように、愛くるしい子猫を優しく愛でるように、産まれてきた子供を涙ぐんで抱き上げるかのように、大切に接した。


 話は止まなかった。

 一つの話題でどれだけの言葉を発せたかなんて、憶えられない程に話した。


 介入者が現れるまでは。

「おーい、マキー」


 遠くから聞こえてくる声に、ハッと我に返る二名。

 此方に近づいてくる足音に彼等は音を立てないながらにワタワタと慌て始めた。

「(は、早く隠れて!!)」

「(――ッ!?)」

「(えっ?! あ、隠れられるような場所が無い?! えーっと、えーっと!!)」


 足音はゆっくりと近づいてきている。

 アイリスからしてみればジェイソンに追われる少女のような無力さにつけ込んだ恐怖が迫り上げられ、ワタワタと動揺の余り思考が追いつかなくなっていた。

 マキも周りをグルグルと見渡すが、徐々に迫り来る足音にハラハラが加速化し、遂には突拍子も無い考えが浮かんでは消えていた。


「ん? 此所に居たか」

 そして。

「あ、あはは……」

 目の前に現れたのは、ヒグマだった。

 彼女は此方を見るや否や、突如として怪しそうな物を観る目で、彼を凝視していた。


「……なあ、マキ」

「はい」

「お前……そんな太ってたか?」

 彼女の眼には、如何にもギャグ漫画であり得る大食い直後のお腹のような膨らみが、余りにも異常で仕方が無かった。


「あはは……ジャパリまんを食べ過ぎちゃっただけです」

 冷や汗がダクダクと流れる。


 無論、そんな訳も無く、腹部の服の下にはアイリスが隠れているに過ぎないのだが……。


 敢えて言おう。

 普通ならバレる。


「……、」

「あは、あはは……」


 明らかに不信感を持った訝しげな目で、彼女は彼の腹部を凝視する。

 少し顔を寄せて見つめようとすれば、同じく少しだけ躰をずらしマキが避ける。

「「……、」」


 濁流のように流れる汗を余所に、ヒグマは長らく見つめていたが「……ハァ」と溜め息を吐き捨て彼の顔を一瞥すると、持っていた熊の手を肩に担ぎ後ろを向いた。

「ま、いいか。一応ボスがジャパリまんを持ってきてくれたんだが、必要ないようだな」

「すみません」

「それと!」

「ヒッ?!」

 熊の手がマキの眼前まで伸ばされる。

 鼻が当たるか当たらないかの距離で伸ばされた熊の手に、若干驚驚おどろおどろとしながら爪先を見つめるマキ。落胆したかのような顔で、彼女はこう吐き捨てていた。

「その「すみません」をやめろ。別に気遣い合う程の中でも無いだろ」

「あ、あはは……はい」

「お前は強い癖に気迫が無い。戰いだって何処かおかしい。ま、それが人の戰い方だって言うなら気にはしないが、あんまり腰を落としてるといざという時に上がらなくなるぞ」

「えっと、肝に銘じておきます」


「……はぁ」

 彼女の二度目の溜め息に、彼は未だ眼前にある熊の手の爪先が数ミリ程近づいた事に身を奮い立たせた。だが、そんな熊の手もまた彼女の肩に戻り、「先に行ってるぞ」と言い残してその場を去って行く。

 そして、彼女が見えなくなった事を確認したマキは、特別大きな溜め息を吐き出しながらに、躰の力を一気に抜き出しながらに言い捨てた。


「あ、危なかったぁ」

 死線を彷徨ったかのような新兵の感情が、奥底から込み上がり、力が抜ける。

 お腹の中ではモゾモゾと蠢く何かが、ピョコンッと耳らしき突起を襟辺りから出す。

「ああ、ごめんな」

 服の下からようやくの事飛び出したアイリスは、まるで息を深くするかのように同じく躰の力を抜くかのように地面に転がり出た。

「――……」

「そりゃ、怖かったよな。ごめんごめん」

「――」

「まあ、悪いフレンズじゃ無いんだ。ただ、少し気の強いフレンズってだけだから。ね?」

「――!」

「悪かったって言ってるだろー! アハハ、くすぐったいって!!」


 グリグリと躰を近づけてくるアイリスに、マキは微笑み寄せる。

 彼等の時間の中の一変に小さく入った衝動は、より一層その絆を深めたかも知れない。


 ただ。

 それだけで、この一瞬だけで――懸念してしまう。


 相互の存在の、意義を。

(やっぱり、難しいよな……そりゃあ、平和って物に程遠い物を平和って云うような世界じゃなぁ)


 アメリカの独立宣言も、黒人と白人の階級が平等になった訳では無い。

 バビロニアにおける法の起源ともなったハンムラビ法典でさえ、上層自由人、一般自由人、奴隷の三種類の構造が当たり前の上での法だ。

 常に人類は、想像上のヒエラルキーが当たり前の中で、その生活を平和と呼んだ。


 現紀元まで語り継がれてきた歴史上の平和とは、そも本当に平和では無く、何不自由なく生きる上層人類が縛られない生活に平和というレッテルを貼り付けたに過ぎない。

 想像上の『平和』と現実での『平和』とは天地の差があるのだ。


 だからこそ、マキの観る世界はどうしても、彼の生きてきた“外”と何ら変わらなかった。


(それでも、此所が一番近いんだ)


 心中に、秘める想い。

 それでも彼は、究極の平和を願って止まない。


(頑張らなきゃな)

 トントンッと胸元に拳を叩く。


 大きく息を吸い込み、吐き出すと同時に、アイリスを抱えて立ち上がった。

「少し、歩こうか」

「――」

 きっと許諾だった。


 彼は、砦とは逆方向に向かって歩み出していた。


   2


 竹林を抜け、森を進む。

 鬱蒼とした木々の隙間から貫く陽の光が霞み、空を覗けば雲が日を隠している。


 だが、そんな状況も気にせず、彼等はまるで飽きる事無く絶え間なく語らい続けていた。


 楽しかった。

 それだけは変わらなかったのだ。

「ねえアイリス、知ってるかい? 竹っていうのは成長力が高くて一日で一メートル以上伸びる事もあるんだ。一日で一メートルだよ? 凄いよね~」

「――!」

「それが一〇〇年くらい生きちゃうんだもん。あんなに長くなる訳だよ……そういえば、アイリスは竹に花があるって知ってた?」

「――?」

「竹も花が咲くんだけど、寿命を終える直前に咲くんだ。つまり、死ぬ前に子供を残すような感覚なのかな。難しい話だけど、でも、命を終える瞬間に子孫や意志を残して死ぬなんて……ちょっとロマンチックだよね」

「――!!」

「ごめんごめん、死ぬつもりなんて無いって! ただ、忘れられるよりも、想いを伝えられたのなら、どんなに嬉しいだろうかなぁ~ってね」

「――」

「因みに、竹は一本で一つじゃ無くて、皆根が地下で繋がってたりするんだよ。だから花が咲いて一斉に竹が死んでしまう事から、昔は良く不吉の象徴とかいわれてたな~」

「――?!」

「あはは、迷信だよ迷信」

 雲行きが怪しくなる空の元で在りながら、彼等の語らいは淡く光る蒼のような優しさを表していたのかも知れない。

 アイリスを抱きかかえ、世界を歩むその姿はさながら絵画にもなり、か細き幸せを歩む友を描き写したかのように鮮やかだった。


「えっと、で。変な所まで歩いてきちゃったね」

「――」

「流石にフレンズには見せられないからね。でも、早く戻らないと皆怪しむかな」

「――……」

「僕ももっと話したいよ。だけど、皆の事も無下には出来ない。でしょ? 大丈夫。僕がきっと皆に認めて貰えるよう、頑張るから」

「――」


 マキは、アイリスの瞳に笑顔を浮かべる。

 出会いが有れば別れもある、と云う恋人同士の切ないシーンのようなその一面の中で……、

 ふと、マキは振り返った。

「?」


 微かな風切り音。

 木の葉がザワザワッと蠢く。


 妙な不安感に駆られ、振り向いたはずのマキだったが、思い過ごしかと前を見直す。


 が。

 忘れていたのは、マキだったのかも知れない。


 人間社会がどれ程に温められた場所だったか、それを離れてしまえば平然と当たり前だと言ってしまう程の乖離がある。

 それは、自然界で生きる動物達にとっては弱肉強食は当たり前で在り、常に危機感を持って生きている彼等と、人間の道を生きたマキに引き起こされる決定的な差があるのだ。


 危険感知。


 そう。

 マキが振り向いたときには、もう遅かった。


 ――余りにも早く、強い衝撃によって、彼の躰は人形のように簡単に吹き飛ばされていた。


   3


 唐突に、突然に、躰は意識とほんの少しズレて吹き飛ばされていた。

 余りにも強い衝撃は、辺りの木々に躰を二・三本ほど衝突し、ピンボールのように跳ね上がる。

 マキはアイリスを抱きかかえ、衝撃を己だけに留めようと必死になる。その結果、彼の躰は雑多に転がり抜け、何処かの開けた場所に投げ出された。

「がッ!?」

 胸の底から押し寄せてくるような衝撃が迫り上がる。吐き出された吐瀉物は、赤い血溜まりとなって緑の草の上に飛び散った。


「……ぁ、か」

 声が思ったように出ず、躰の四肢が麻痺したかのように動かない。襲撃者の姿さえ視界には入らず、次が来る可能性の中で彼は必死になって守ったアイリスを解放する。

「に、げぉ」

 口さえも思ったように動かない。

 強い衝撃は、彼の脳にまで伝わり、一時の脳停止手前まで追い込まれていたのだ。


「――」

「ぁ、ゃ」

 か細い声が、今にも消えそうになりながら吐き出されている。彼を心配するように寄り添うアイリスだが、小さな躰には到底どうにも出来ない自体だと、無意識に感じてしまっていた。

 焦燥感。

 セルリアンにはないと思われる事が虚構のように、辺りを飛び跳ね、押し動かそうと必死になるアイリス。だが、願いも虚しく、襲撃者の足音は着々と近づいていた。


「――ぁ」

 擦れた声が、死に体の彼の喉奥から漏れる。

 震える指で地面を掴み、無理矢理に躰を動かし始める。

 目に生気はない。だが、膝を曲げ、地面に浸け、躰を起こし上げる。


 破けた服の隙間から見えるのは、赤黒く染まる肌の色。今にも血が噴き出しそうな躰が、立ち上がろうとする幼児のように足腰に力を込める。


「……はぁ」

 喉奥から噴き出す嗚咽を、何とか吐息にして吐き出す。


 視界の先を見開けば、鬼がいた。


 二メートルとも三メートルとも言えるだろう、黒い人型のセルリアン。人間に模した姿なのだろうが、特徴的な角が一つ。四肢や躰を見積もっても、肉厚が何倍にも膨れ上がっている拳。

 関節という概念はあるのだろうか?

 エネルギー量はどれ程の物なのだろうか?

 レスラー程の超重量級なのだろうか?


 今の彼に、そんな思考はない。

 ただ、腕を前へと振り出し、拳を握り構える。もう片方の腕を胸元に引き寄せ、彼の構えを引き出した。

(時間を……稼ぐ)

「――ッッ!!」

 彼の意思に反してか、まるでアイリスは「逃げようよ!!」とせがんでいるかのように、彼の足に引っ付いてくる。

 だが、彼は残り僅かな、微かな意識だけを頼りに、立ち向かった。


 ダンダンダンダンッ!!

 鬼の足音は標的に近づくにつれて、地響きの感覚が狭まって行く。最後には駆け足気味に此方へと向かいだし、拳を高らかに上げて、振り下ろしてきた。

 ビュンッ!

 マキは直ぐさま、拳の軌道の下を潜り抜けるように飛び込む。足下にいたアイリスは、その間に彼に蹴り飛ばされていた。


 ムギュッと草原の上に落ちたアイリスは直ぐさま、彼等を見上げる。


 轟ッッッ!!

 拳を避けながら、マキは鬼の背中に一撃を放つ。今までのマキでも観たことがない、その直接攻撃。だが、威力など相手に比べればか細いようで、微動だにともしなかった。

 直ぐさま鬼は後方にいるマキに向けて腕を振り回したが、マキは振り回す直前に肩元にチョップをかまし放たれるより早くその力を霧散した。

 だが。


 ゴバァァッッ!!

 反対側から強い衝撃が走る。

 セルリアンに関節という概念はない。

 きっと、彼が本来の状態であればある程度は対処できただろうが、瞬間だけの戰いでは、彼の力は無力だと知らしめるように、その力はまたもや彼の躰を薙ぎ払った。


 ギュォンッ! と躰が宙を舞った。

 地面に受け身もなく落とされ、グシャリッと嫌な音が鼓膜に響く。まるで、鬼がゾンビと戯れるかのような、条件稼ぎの為に低ランククエストを受ける上級者かのような行動。

 今にも死に絶えそうなその体は、まるで弱さを魅せぬかのように、武人のように構え見据える。

「ぼ、くが」

 擦れたような声で、まるで無意識に発したような、言い聞かせるような声だった。

 鬼は彼へと向き直り、ゆっくりと近づいてくる。ドスンドスンッという地響きが彼やアイリスを揺らし、その脅威を思い知らせるかのようだ。

 鬼は、拳を振り上げ、降ろした。


 グシャァッ!!

 まるで果実を叩き潰すかのように、淡々と、淡々とマキの躰に叩き落とされる。その度に微かな力で立ち上がろうとするが、弱り行く力を奮い立たせる度に地面に埋められた。


「―……ッ」

 小さなセルリアンは、解らなかった。

 逃げ出せば良いのか。

 立ち向かえば良かったのか。

 何をすれば良いのか。


 焦燥が感情を雑多に混ぜ込み、感情さえも混沌とする。


 どうすれば良いか、解らないまま震える小さな命は、消えかけた命が今も尚諦めない姿を目にした。


 ガッ!

 拳を、耐えた。


 膝を突きながらも、振り下ろされた拳を躰めい一杯に使い耐える。ボタボタと垂れ落ちる血など最早認識せず、唯々一点の目的の為だけに、彼の意識は立ち上がったのだ。

「………………ッッ!!」

 後頭部から背中までを使った拳の防御は、まるで大樽を背負い運ぶような姿だった。だが、更に追い打ちと言わんばかりに鬼の拳は振るい上げられる。

「ッ」

 ビュンッ! と、此所に来て彼の躰が途轍もなく俊敏に動く。振り下ろされた手の下へと潜り込み、腕ごと捕まえると鬼の躰が宙に浮いたのだ。

 そう、それは一本背負いのようで、鬼の躰が意図も簡単に投げ飛ばされた。


 ドゴォォォンッッ!!


 正確には、合気の一種。

 力のベクトルを変換し、働く点を変える。

 フレミングの法則と聴けば、手の指で表す法則に聞き覚えが有るのでは無いだろうか? 謂わば、合気も同じで在り、そのベクトルその物の変換を意味する。

 合気は、謂わばその導体と呼ばれる影響点を映すことが出来る。力の働く方向と、その強さ、更にはそれを支える力。

 だからこそ、世では簡単なことではないと言われてきた。

 実践の合気とは、物理学に生物学を一タスクで同時並行しなくてはならず、更にその行動を戰闘下で無意識の世界で可能にさせなければ完璧な合気は行えない。


 今、

 その行動は、

 真に無意識の中での意識だった。


 絶えず行ってきたであろう訓練と、躰に滲む経験が無ければ行えない技術。更に一回りも大きい敵を逆算し力の方向を測定する。

 それだけの意識を、マキはたった一度の勝機に賭けた。


 が、結局はそれまでだった。

「……ッ」

 膝から崩れ落ちる。

 出血、内出血、打撲、骨折。数多の外傷をどれ程重ねればこんな痛々しい姿になるのだろうか。そう言葉には出さずにはいられないような血溜まりが、足下を深く濡らしていた。


 そもそもとして、意識など半ば無いような状態だ。

 無意識の中で、まるで行動目標を組み込まれた機械のような従順な動作は、比類無き精神のように強い意志で立ち向かう。


 が、限界はある。


 俯き、跪いた彼の顔面に、フルスイングの一発が炸裂する。

 ゴギュゴギュゴギュゥゥゥッッ!!

 鬼の拳は顔面から胸元を全て捕らえ、振り上げる。まるで骨と内臓が摺り軋む音がイヤに響いた。


「……ぁ」

 声が漏れた。

 最早、押し付けられ、迫り上がった空気が漏れ出すだけの声だった。声を出そうという意識は何処にも無い。この場における全て者達が、声などという生命器官の発達部位が壊滅している。


 だから誰もが、行動で答えるしか無い。


 大きく拉げ、殴り飛ばされた彼の躰が、地面に衝突する寸前で躰をギュルンッと回転させていた。

 それだけでは無い。

 まるで痛みなど知らぬと言わんばかりに、着地と同時に地面を蹴り抜き、駆けだしたのだ。それも、初速に最高速を発揮した、ノーモーションダッシュ。余りにも予備動作の無いその動きは、イキナリの加速をその場にいる誰もが認識できなかった。

 その勢いは、ブレーキ無しに鬼に向かう。


 まるでピストルから放たれた銃弾のように、豪速で飛ぶ鉄球のように、空を切る加速が鬼のボディに炸裂した。


 バゴォォッッ!!

 鬼は溜まらず仰け反る。

 防御や、硬化などの認識など追いつく訳も無く、躰はグニャァと歪み、今まで動かなかったその巨体が――真逆の地面を弾んで林の中に吹き飛ばされていた。


 木が簡単にへし折られ、黒鬼は破壊された大木の中で真っ逆さまの状態でめり込んでいる。余りにも強く想い衝撃だったのか、鬼は暫く動かずにいた。


 対するマキも無事では済まない。

 寧ろ、与えたダメージよりも、受けたダメージが明らかに大きかった。

 顔面は痣と凹みがバラつき、片目には亀裂が入る程に拉げ、血が傾れている。胸元もまるでプレスされたかのように凹み潰れ、片腕が在らぬ方向に曲がり、唯々くっついているだけの物と化していた。両足に至っては何とか踏みとどまっているが、服の下を覗けば青痣に染まっているだろう。


 そんな姿に、セルリアンのアイリスでさえ怯える程だ。

 彼も彼女かも解らない存在は、マキに近づく事が正解か、言われた通り逃げることが正しいのかも解らず、その場で怯えているだけだった。


 ただ、マキは……。

 動かされているのかも知れない。

 この世界に来て、自分の価値観を揺らがせなかった精神は、伊達じゃ無い。真っ直ぐ、その平和に向かっての歩みを諦めなかった姿でさえ、まるで変わらなかった。

 傷つくことを拒み、平和を願うその感情の根幹は、若しかすれば単なる願望とは程遠い、頭では無く心に染みついた何かなのかとも思える程に、彼は真っ直ぐに挑むことを諦めない。


 全身痣塗れ、血塗れ、打撲塗れ、骨折塗れ、外傷塗れの青年は、奮い立たせた信念だけで今も尚立っているその姿は、確かにアイリスの目には映っている。

 だからこそ、解らない。


 きっと、逃げることはこの場に置いて正しく、実に利己的な判断だ。

 だが、それで良いのか? と、何かが問いかけてくる。まるで、啓示のように自分自身に訴える何かが、損得勘定では測れない何かが、アイリスをそこから逃がさない。


 ――決めるのを未だ迷うか?

 選択は、一刻を争う。

 決断力が乏しい己を呪う。


 けど、

 だけど、

 妙にチラつく。


 微笑んでくれる、彼を。


「――」

 さぁ、決断は来た。


 怪物は、木々を薙ぎ払い、またもや彼に押し寄せる。

 何をするべきか。

 何を成すべきか。


 問いかけ続けて、回答は得られたか?


 では、解答を聞こう。


 ――君は、何をするべきか。


   4


(この感覚は、良くあるんだ)

 爛れた躰を奮い立たせて、青年は残った意識の中で巡り合わせる。

(死にそうな程にボロボロになったときとか、意識が飛び抜けそうなふわふわってした時とか……極限までやったって時に限って、あるんだ)

 音は無い。

 視界は黒。

 伝わる物は、肌を凪ぐ風か、もしくはそれ以外の何か。


 たったそれっぽっちの中で、唯それでも青年は何かを明確に掴んでいた。


 戰場にて、青年は未だ戰っていた。

 豪腕振るう鬼の攻撃を辛うじて避け、その豪腕事力を返す。返された力はそのまま鬼へと衝突し、更に比類無き一撃を鬼が放とうとも、身を削りながらに彼は受け流す。

 一進一退揺るがぬ攻防。

 まるで、何かが彼を押すのだ。


 だが。

 それでも、無情にも、非情にも、優性は鬼だ。


 不意だった。

 ゴギュゥッ!! と顔面を横から、強烈な拳が炸裂した。

 マキの躰が、首をギュンッと曲げ、顔面から地面に叩き落とされる。

 それも、防御も何も整えられないという、完全無防備状態の中での一発。彼の躰は地面にめり込められた。

 死に体。

 その体が、更に起き上がることは無かった。絶命したのか、意識が完全に切れたのかは解らないが、それでもその場を動かない。


「――」

 ここまで、必死に戰った。

「―――」

 選択を悔やむばかりで、今まで得られ無いはずの優しさをくれた。

「――――」

 優しくて、暖かくて、手に入るはずの無い物ばかりをくれた。こんな小さな命の為に、彼は躰を張ってくれた。こんなにも、誰もが手を伸ばさないはずの場所に、ひとり、真っ直ぐに向かって来てくれた。


 だから。


 アイリスは、彼の前に立つ。

 己の悔やましさ、その無力感など、全て理解して、それでもそこに立つ。


 大切な友達を、護る為に。


 その時だ。

 奇蹟なのだろうか。

 アイリスが彼を庇うように前に出て、彼の手に躰から出した触手を宛がった。息はある。そして、もう一つ。

 彼から逆流する何かを、確かにアイリスは感じた。


 蒼く光る輝きが、アイリスの躰へと満ち始める。アイリスの躰はゆっくりと変形しだし、まるでセルリアン特有の輝きを奪うという定義を示すかのような、その一端の奇蹟。

 ジワジワと、アイリスの躰は変形し、嘗ての小さな躰から一変し始める。

 躰は半透明、まるで液体を蒼く染色したスライムに、輪郭を持たせた姿。


 その場に立っていたのは、マキと瓜二つの、蒼き友。


 蒼き友の瞳が、眩く蒼く光る。

 彼の手を握り、前へとむき直す。

 面影は、全く一緒だった。

 小さかった命は、たったひとりの友達を守るべく、同じを面影の青年へと変貌し、鬼を睨み付けた。


 意識を失っていたはずの青年は、何処かからか、声を聴いた気がした。


 ――今度は、僕が守るから。


   5


「……?」

 全身が、軋む。

 まるで錆びた金属部品が、擦り合わさって動かなくなってしまったような感覚だった。全身の駆動核が死滅し、意識がフワフワとする中で、ようやくの思いで動かせたのは瞼だった。

「……ァ」

 地面に顔の半分が埋まり、片目の景色は暗黒世界だった。だが、もう片方で見る景色は連なる木々に眼前に広がる赤い草原。

「?」

 耳に音が入らない。

 辛うじて動かせる物は無いかと、全身一画一画を準々に動かそうとする。立ち上がることは叶わず、辛うじて動く物は首程度だった。

 せめて視界を変えようと、マキはゆっくりと顔を上げ、辺りを見渡した。


 蒼き光と、黒き闇の、衝突。


 音は聞こえない。

 ただ、肌に伝わる波動が、震撼させた。

 こと黒鬼に関しては、その豪腕を使い執拗にアイリスを狙う。だがアイリスは、まるでマキが万全の時のような動きに加え、躰のあちこちから触手を出し足りない部分を補いながら戰っている。


(アレ、は?)

 蒼き人型のそれは、俊敏な動きで豪腕の破壊力から逃れつつ、マキと瓜二つのような動きで黒鬼と対等に立ち回っている。まるで、鏡映しでもされたかのような、ドッペルゲンガーでも観ているかのような光景だが、唯マキは直感的にその正体が浮かび上がっていた。

(アイリス……なのか)


 可能性を探るとか、きっとそんなことでは無い。

 だけど、わかる。


 黒鬼に必死に喰らいつき、その諦めない、引かない姿勢、まるで、本人を観てきたからこそのような、圧巻な立ち振る舞い。どれをとっても、誰もがマキの擬態だと思えるその面影の無い存在を、マキは、マキだけが察していた。


(くそ、なんで逃げないんだよ)

 悔やむ。

 どうしようも無く、悔やまれる。

 戰わず逃げれば、こんな危ないことに巻き込むことは無かった、と。そんな力があったとしても、そうで無くても、そうさせるよう追い込んでしまった自分の無力さも。

(誰も責めなかったのに、何故……)

 指が動かない。

 四肢が応答しない。


 感覚で理解してしまう程に、実感してしまう程に虚しく、無力。

 それでも、そうで在ったとしても……。


「……、」

 目の前では、必死に喰らいついている。

 鬼は攻撃を受けようと怯む様子も無いし、寧ろアイリスの消耗が著しい。可視的な判断ではあったが、仄かに躰から溢れる淡い蒼光が色あせ始めている。打撃が防ぎきれなくなり、度々人のように息切れをする。


 乱打する拳を駆け避け、反撃を行っても、まるで怯まない。認識してきた常識と全く違う現実が、刻一刻と時間を宣告してきた。

「……ッ」

 歯を、食いしばった。

 ここで、止まる理由が無かった。


 瞬間、大きく振りかぶった黒鬼の拳が、足を掬われたアイリスに向かって放たれる。

 ガンッ!!

 咄嗟に躰を硬化し防いだアイリスだったが、それ以上に衝撃はアイリスの躰を大きく吹き飛ばしていた。


 黒鬼も、追撃を緩めまいと向かおうと……アイリスも、怯まないと直ぐさま立ち上がろうと……した時。

 二者は同時に行動を停止した。


 ザッ!

 草を踏む音。

 二者がそれぞれその方向を見据える。


(わかってる)

 ボロボロの躰を、

(理解してる)

 血塗れで、動き出すはずの無い肉塊だったそれは、

(なら、もう)

 再び、立ち上がった。

(迷わないよ)


 息絶え絶えに、今にも倒れそうな彼は、またも立つ。

 致死寸前。言葉に表すならその通りで在り、またの言葉を満身創痍と言えば良いのだろう。それ程に目に見えるダメージは常軌を逸しており、だがそれでも尚立つ。


 そうだ。

 そう、意識した時。


 本当に無意識に、立ち上がっていた。


「……へ」


 振り絞った笑みを浮かべる。


 だが、何ができるのか。現実は根性論では無い。

 だから、マキは必死に伝えていたのだ。その笑顔を、アイリスに向けて……。


 黒鬼は、一心不乱に豪腕を振り上げマキに迫る。


 立っているだけで限界の、生きたサンドバッグに拳を放つ。

 それが意味することは、受ける本人でさえも解って居る。

 だけど、それでも。


 刹那。

 豪腕は、相手の全身を粉々に砕いた。


   6


 理解できなかった。

 目の前にある現実が、理解できなかった。

 なぜ、自分のような存在にそこまで肩入れしてくれるのか。今を生き抜く方がもっと綺麗だと理解できるはずなのに、チャンスが巡り来ると解って居るのにも関わらず、理解できなかった。


 なぜ、こうも祈りとは真逆に世界が働くのかと、恨んだ。


 何故。


 目の前でアイリスが拳を受け止めているのか、マキには理解できなかった。

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぇ」

 アイリスの躰に、瓜二つの躰に、亀裂が走り出す。

 途端だった。

 マキはまるで、手を付けられない程に暴走した猛獣かのように、全身のダメージなど鑑みずに怪物を殴り飛ばしていた。怒りに任せた、本気の一撃。突然のように、黒鬼の躰をまたもや木々の奥まで吹き飛ばしていた。


 彼は鬼を吹き飛ばすと直ぐさまアイリスに駆け寄り、抱きかかえた。

「……ッ」

 アイリスを呼ぶにも、声が出ない。

 自分と瓜二つな親友を、腕の中で浮かび上がって行く光の粒子を無惨に求められずに、見続けていた。


 何故だ、と。

 どうして僕なんかを守った、と。

 問いただす声さえも出ないことを恨んだ。


 粒子の中で消えゆく親友も、何も言わず、だが何かを口ずさむように唇を動かして、彼に微笑んだ。


 ――ありがとう。


 ただ、それだけだった。

 劇的な別れでもなければ、何物でも無かった。

 本当に呆気なく、アイリスは彼の中で溶け出す。

(まて、まて……待ってくれ!!)

 心の訴えなど届かず、粒子化は進む。どうやら核を砕かれたのだろう。


 慌てふためく彼を余所に、ゆっくりと、アイリスの瞳が閉じ始めていた。

(待ってくれ……頼む……、僕を一人にしないでくれ!!)

 最後の願い。

 でも、それさえも、無情にも言葉にはならない。


 粒子化は無惨にも進み、だがアイリスは抱きかかえられ、微笑むようにして……その輪郭の全てを粒子となって空へ旅立った。ただ一つ……まるで置き土産のように、小さな鉱石のような蒼い石を手元に残して。


「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、」


 潰れた喉が、空を掠めていた。

 擦れた声が段々と力強くなり、終いには意識と友に覚醒を果たす。

「……………………ぁぁ、ぁぁぁぁああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 叫んだ。

 途方も無く、叫んだ。

 掌に落ちた、アイリスだった残骸が虚しく反射している。

 残酷にもマキは、痛々しく実感した。


 友を失った、痛みを。


 怪物は、鬼は、彼を無表情なのかも解らない不偏の形で、拳を振り上げる。標的が一つ減っただけ、ただ殺す奴があと一人なだけ。機械的思考で終わりを告げる拳を振り上げる。


 慟哭する青年の悲しみなど、無視して……大きく振りかぶり、放った。


 ――ッッッ!!


 木を薙ぎ払い、土地を抉り、反発するかのように飛ぶ。

 怪物が、鬼が、弾かれたのだ。


 光の膜が……マキを包み守ったのだ。

「……へ」

 鬼の様を観て、彼は初めて気が付いた。

 自分を包む暖かい感覚。それは、掌に抱かれた蒼い結晶から、躰の神経を全て走り、全身へと広がっていた。


(暖かい……傷がっ?!)

 驚きは続く。

 躰の傷が治り始め、彼の躰は直ぐに前回の状態へと戻されたのだ。更には、その蒼き結晶は絶えず奇蹟を彼へと送りつける。


 意識が飛んだ。

 まるで、白紙の世界にでも飛ばされたような、途方も無く白の世界。


「――アイ、リス?」

 目の前には、彼のよく知る友が居る。

 アイリスは、まるで彼に励ますように、笑い、飛び跳ねていた。

 その姿を見て、彼は理解した。その微笑みを観て、彼は覚悟を決めた。此所から、何をするか、何を為べきか。

 そして……。


「……嗚呼、行こう」


 その一言。

 その瞬間、彼は現実へと戻される。

 膝から崩れていた体勢のまま瞳を開け、鬼を見据える。


「……、」

 手に持つ蒼き結晶が、まるでマキに答えるかのようにドクンッと輝いた。


 蒼き結晶を握り、引き、そして天へと翳し……吐き捨てた。

「行こう、共に!」


   7


 輝く、躰。

 表面からは淡く光る蒼き輝き。瞳は藍色に変り、突飛な変化とは打って変わり、余りにも静かだった。風に躰を任せるような、確かに目の前に立っているはずなのに……自然と調和しているような認識の薄さ。

 獰猛な敵とは違い、まるで自然その物を相手取っているような感覚。


 鬼は真に、その姿に見とれていた。


「そっか……」

 マキは、ヒッソリと吐き捨てる。


「大丈夫……僕を、信じて」

 朗らかで、優しい笑顔。まるで、その姿が平和や愛を象徴するような、慈愛その物を体現したような輝きの奔流だった。


 マキは、掌を胸前で鏡合せをするように添える。

 両手の平の中心点では、ゆっくりと光の粒子が集い始めた。


 鬼は、恐れなかった。

 強いとか、敵わないとか、次元が違うとか……そう言う話では無い。まるで、己の敵が居ないような、安心しきっているような状態だ。

「……はぁっ!」


 掌の内で溜め込まれた輝きの粒子達は、一斉に鬼へと放たれる。

 視界いっぱいに染まる光の粒子群は直ぐさま鬼の躰を覆い、その巨体を簡単に包んでしまっていた。


 キラキラキラッと輝く粒子達は、鬼の周りで留まっていると……ゆっくりと離れていく。そして、光の穴からようやく見えた鬼の姿は、最早黒い表面は無く、蒼い純性のセルリアンへと変貌していた。


「……もう、戰う必要は無いんだ。帰ろう、住み処へ」

 マキは、青鬼へと促す。


 まるで先ほどまでの敵意が嘘かのように、鬼は小さく頷くとそのまま森の奥へと去りだした。激戰の後もある、悲劇の後もある……だが、それでもマキは追い求めた。

 そして、その奇蹟はマキの嘆願を呑んだのだ。


「っと」

 マキの躰から輝きが消え、アイリスだった蒼い輝石へと収束する。


「此所に、居るんだね」

 声を掛ければ、呼び返してくれる声が彼の脳に直接響いた。


 まだ、生きている。

 姿が変わったが、それでも大切な友達は繋がってくれている。


 そして、マキはその日、希望の光を観た。

 今まで、無理だと解って居てもそれでも諦めなかった理想。だけれど、その道筋がようやく見えたような気がした。


 だから、ここからだ、と意気込んだ。

 無理かも知れないと、もう思わない。

 諦めない。

 本当に笑顔で微笑んでいられる世界があるはずだ。


 その為に、マキは……誓う。


「行こう……僕らの思いで、この世界を変えよう、アイリス。きっと来るんだ。空想の平和じゃ無くて、本当に平和をつかみ取れるかも知れないんだ。だから……」


 彼等は歩み出した。

 運命の歯車が動き出し、着々と、世界は傾きを変え始める。


 そして……。


   8


「どうしたの?」

「……、」


 声を掛けられた少女は、何処か遠くを向いていた。

 何を感じ取ったかは周りに居る少女達も解らない。だが、呼ばれた少女は何故か胸騒ぎがしてなら無かった。


 そして。

「一旦、キョウシュウへ戻っても良いかな?」

「えっ、どーして?」

「なんか、嫌な予感がするんだ……」


 その言葉を掛けられた少女は、小さく「うーん」と悩む仕草をしながら、周りに居る別の少女達にも目を回した。

 そこに居る少女達は特に不満の顔を浮かべることも無く、寧ろ快諾の勢いで返していた。


「うん、行こっか、かばんちゃん!」

「ありがとう、サーバルちゃん!」


 運命の歯車は、更に新たな物語を呼び寄せ始める。


 此所から、マキという青年の物語は一気に加速し始める。

 そして、その……世界も。

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君が進む先へ 甘味しゃど @Shadow_Kanmi

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