叶わぬ恋を叶えるために。

作者様の『この世界の何処かに』から続く王国物語シリーズ第4弾にして完結作。ですがこれから読んでも問題ありません。

主人公は男爵家の次男、アントワーヌ君。男爵と言っても下級貴族で長男でもない彼は、貴族学院に入学してからもやりたい事は見つからず、ただ毎日を過ごしていました。しかしある日、そんな彼の運命を変える出会いが訪れます。
学院で見かけた年上の令嬢、フロレンス。二人は瞬く間に仲良くなり、互いに恋に落ちます。このままひたすら甘々な展開になってもそれはそれで良かったのですが、残念ながら彼等には大きな苦難が待ち構えていました。フロレンスには、すでに婚約者がいたのです。

婚約者がいるのに他の男と、なんてフロレンスを責めないでください。この結婚は本人の意思ではなく、しかも相手の男と言うのがとんでもないやつなのです。おかげで、読みながら何度も相手の男に、フロレンスを返せ、彼女を自由にしろと叫んだ事か。

もちろんアントワーヌも愛する人がそんな男の元へ行って平気なわけがありません。何とかして彼女を解放しようと、何年にも及ぶ闘いの日々が始まります。
大切な人のために頑張るアントワーヌが本当に健気で、早く何とかなってほしいと何度思ったことか。
一方フロレンスはフロレンスで、いつかアントワーヌと結ばれるその日を待ち続けます。『待つ』とだけ聞くと消極的ともとられるかもしれませんが、辛い状況で一人をずっと信じ続けると言うのはとても難しい事。ただ守られるだけには止まらない、彼女の芯の強さが伝わってきました。

果たして二人は無事結ばれるのでしょうか?


それと、冒頭でこの話から読んでも問題無いと書きましたが、もちろん他のシリーズ内の他の作品を読んでいた方がより楽しめます。もしこのお話を読んで他の作品にも興味を持たれましたら、ぜひ読んでみてください。そして最後に、またここに戻って来てみてください。
最初読んだ時は分からなかった発見があったり、登場人物の行く末が、より一層深く思える事でしょう。

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