閏16話 124年ぶり

 暦の話をもう少し。


 今年、2021年は節分が2月2日だったのだが、これは124年ぶり(1897年以来)のことだった。


 〝節分〟は本来的には立春・立夏・立秋・立冬の前日のことだが、通常、立春の前日の節分だけが祭事として残っている。例年これが2月3日なのは、立春が2月4日だったからであり、今年2月2日だったということは立春が2月3日だったということである。

 では立春とはなんぞや?というと、春分を0°とする太陽黄経が315°となる時分を指す。


 現在私達が使っているグレゴリオ暦は太陽暦で、太陽年と暦がおおよそ一致している。しかし、平均太陽年が約365.2422日(≒365日5時間48分46秒)であるのに対し、暦上の一年は平年が365日で閏年が366日と一日単位で補正が行われる。平年は天文的な太陽年に対し5時間48分46秒ほど不足し、逆に閏年では18時間11分14秒ばかり過ぎることになるのを、第4話(*1)に書いたようなルールを用い、400年間に97回の閏年を挿入することで365.2425日として太陽年と暦年の対応を取っている。そんなわけで、太陽年との誤差は大体前後1日程度に收まっている。


 さて、前回節分が2月2日だった1897年(明治30年)とはどんな年だったかというと、前年の1896年が閏年で1日多かった。1897年は平年なので太陽年より暦年が短く、翌年の立春は2月4日に戻った。

 そしてもう一つ、その3年後の1900年は。そう、グレゴリオ暦の置閏ルールによって、1900年は平年であったため、閏年で起こる時間の追加がなかったのでそのまま不足分は積み上がり、それ以降立春が2月3日となることもなかったわけである。


 今回の立春2月3日はどうして起こったのかを考えると、昨年2020年が閏年で一日多かったことが直近の原因だが、もう一つ忘れてはいけない要因がある。

 それが西暦2000年だ。憶えておられる方も多いだろうが、西暦2000年は先出のグレゴリオ暦の置閏法に基づき、閏年だった(*2)。グレゴリオ暦全体では一年は平均365.2425日なのだが、1901年以降この120年に限って言えば、365.25日。積み重なったそのズレの分、暦の方が実際の太陽年よりも先に進んでしまっているのだ。

 このズレは西暦2100年に再度補正されるまでこのままなので、今年以降、立春が2月3日になる年がしばしば出てくることになる。(この辺りは国立天文台のページに詳しい*3)


 ところで、その立春だが厳密には「太陽黄経が315°になる瞬間を含む日」なわけで、実際には時分が厳密に定まっている。これは毎年国立天文台が発行する暦要項に記載されており、2021年(*4)を参照すると2月3日23時59分とある。ギリギリ滑り込み2月3日だ。ともあれ、それが23時59分だろうがなんだろうが立春は「2月3日」になり、節分は2月2日になってしまう。

 当然こんなタイミングなので、来年は約6時間遅れて2月4日5時51分となり、節分は2月3日なのである。


*1

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886223897/episodes/1177354054886240524


*2

某F社のカレンダーICがやらかしてATMが停止する騷ぎに。


*3

https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2021_2.html

https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FC6F3BDBDBBCDC0E1B5A4A4CECAD1C6B0A4C8A4A6A4EBA4A6C7AFA4CECCF2B3E4A4C8A4CF.html#a4462621


*4

https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/yoko/2021/rekiyou212.html

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暦の話 @0guma

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