この作品には唯一無二の世界が在ります。
綿密な世界構築が成されている作品に出会うと、私の場合は小説を読むというよりは、その世界に深く潜っていくような感覚になります。
空気感や重力までも変わってしまったような、そんな奇跡のような体験。
この世界に潜ったときにまず感じたのは、壮大なスケール。
いわゆるどこにでもあるファンタジーや、そのコピペではない。完全なるオリジナルワールド。
そしてこの世界の中にも神話があり、我々が考える神々とはまた違ったものが存在するのです。人の成り立ちもまた同じ。
世界は丸くない。空の上にはまた海が広がる。それが何階層にも及ぶ、多重平面世界。
そしてストーリーが進めば進むほど、この世界の深さに圧倒されます。まだここから転じるのか。まだ先が有るのか。そうやって世界に飲み込まれていくようです。
そんな壮大な世界の中で、主人公や周りの人々はあらゆる決断を迫られ、逼迫した状況の中、自分で考えた最大のベターを選んでいきます。そう、ベストは選べません。相手にしたものがあまりに強大だから、立ち向かうには多くの犠牲が必要になるのです。
魔女の弟子、魔人、王子、語り部と魅力的なキャラクターたちが、己の宿命をまっとう、またはその運命に立ち向かって行きます。
神も悪魔も魔法も剣もあるけれど、伝説の勇者はいません。
宿命を背負っているとはいえ、ただの魔女の弟子——サリヴァンが主人公です。
それでも彼は立ち向かいます。
身分も性別も年齢も関係ない。立ち向かうための覚悟を決めたときは、カッコイイものです。
この世界で生きるすべての人たちは、みんなカッコイイと思いました。
壮大なスケールの世界観。カッコイイキャラクター。
ファンタジーを読む動機は、充分用意されている作品です。
あとはその身を投じるだけ。
この深い深い世界の中へ。
覚悟を決めた読者は、カッコイイものですよ。
この壮大華麗な物語を、厚く硬く、吸い付くように指触りのいい紫紺の紙にざらりと星を散りばめて、職人の手で丁寧に上製本に誂えたものを、大事に大事に本棚に納めたい。
遥か昔、神々と交わされた契約と予言。
三千五百年の猶予が終わり、今宵『最後の審判』が始まる。
その運命に飲み込まれていく王家の末裔達と、彼らを愛する『語り部(意思ある魔法)』達の織り成すドラマチックな物語。
深く緻密に組み上げられた独自の世界観や設定が凄まじく素晴らしい本作品、もっと読まれて欲しい。もっと広まって欲しい。あなたとこの世界を共有したい!!
コミカライズしたらめちゃくちゃ売れそう。でもこれは是非とも文章で読んで欲しい。
きっと初めの一節からラストシーンまで、全てを組み立てた上で書かれているんじゃなかろうか。だから破綻がないし、どっぷり浸かればもう読む手が止まらない。
作者様の愛がこれでもかと込められたこの作品に、あなたも浸ってみませんか。