登場人物の人柄が想像しやすく、人と人のやり取りや心情と共に展開していくストーリを、とても楽しく読み進めることが出来ました。
そんな風に展開していくの?という驚きの連続です。
例えるならば、丸くて美味しいドーナツ(映画)をぐるりと巡る物語でした。
パンケーキのつもりで齧ったら、実はフレンチクルーラーで、食べ進めるうちにダブルチョコレートになっていた。ちょっと珈琲を挟んで、もう一度齧ると、お!オールドファッションという側面もあったのか!という展開で、最後にはエンゼルフレンチを噛み締めている。
妄想が過ぎました。すみません。
ああ、でもフレンチクルーラーからエンゼルフレンチに行き着くあたりを誰かに分かって貰いたい。
熱々の珈琲を入れた水筒とドーナツをお供に、星(映画)を見に行きたくなるお話です。
今さらなのですが「地元のイイ話」という意味ではまさにドンピシャだな、と。
どんな事業においても、その成功には天才的かつ行動力のある発起人とサポートする裏方担当がいて、彼らを取り巻く環境が密接に関わり、その結果があたかも必然のように導かれているように見えたりしますけど、実は多くの奇跡的な偶然から成り立っているという――
いや、決して偶然ではない。意志力がみんなをつき動かしている。
人を動かすもの――それは熱意であったり、成功イメージであったり、信頼関係であったり、いろいろな意味でのポテンシャルであったり、場合によっては恋愛感情だったりしますが、基本的にポジティブであることって大事だな、とあらためて思います。日本人って割とネガティブで保守的ですけど、リスクを優先して考えるのはビジネスの話であって、自分の人生すべてがそうである必要はないわけで、やりたいことは今すぐにやってしまおう、という考え方にはとても共感できるのです。そして思うのです。それって、最高だよね、と。
長野県の原村で開催される「星空の映画祭」の開催秘話、という形式をとった小説。
のっけから読者の興味を引かずにはいられない大金と、個性的な登場人物達。
登場人物達の人生が、さらりと、しかし確かな筆致で描かれていて、人物像に深みを与えています。
推測に過ぎませんが、おそらく外国人作家がお好きな作者様ならではの手法ではないでしょうか。こんな方法があるのかと、読むだけでも勉強になります(いや、勉強といいつつ、結局、面白くて読んじゃったんですけれども)
登場人物それぞれの考えが独特で、でも説得力があって、彼らがどんな化学反応を起こすのかと、わくわくしながら一気に読んでしまいました。
映画好きには特に楽しめる作品。ぜひご一読くださいませ。
長野県の冷涼な高原である八ヶ岳で夏に開催される、大自然の中の野外映画祭として知られている「星空の映画祭」をテーマにしたお話です。
この素敵な映画祭。誰が、どのように初めて、どうやって続いているのか。その知られざる経緯を教えてくれます。
恥ずかしながら、初めて真実を知りました。かつて私は、源義経がモンゴルへ逃げてチンギスハンとなった事や、織田信長が本能寺の変を生き延びて大陸に渡り、曹操となったこと、そして、ジャンヌダルクが火刑を逃れて日本に渡り上杉謙信となった真実等を後付けで知りましたが、まさか星空の映画祭、ならびに、三億円事件にこんな真実があることを、初めて知りました。
とても魅力的な人々が、思いもしなかった出来事を重ね、ポジティブで、素敵なエピソードを積み重ねて作り上げた素敵な物語だったということを、今まで知りませんでした。
そして、現在もこの真実を隠し、ボランティアスタッフを中心に素敵なことの連鎖を続けている映画祭のスタッフの方々も、きっと素敵な方達なのだろうな、と思いました。
読めばきっと、星空の映画祭が好きになる素敵なイイお話です。是着ご一読を。
初めに断っておくけれど、ぼくは映画が好きだ。
だけど、最後に映画を観に行ったのはいつだろうと思い返してみると、もう10年以上映画館に行ってなくて、ちょっと愕然とした。
同様に、レンタルビデオ店も最近利用した記憶が無い。
というか、レンタルビデオ店自体少なくなっている気がする。気のせいではなく、本当に減っているのだろう。
そう言えば本屋も減っていると聞く。地方だと発売日に置いてないなんて普通だし、取り寄せてもらうくらいだったら『amazonで注文したほうが早いよね』となってしまう。まあこれは日本の出版業界の怠慢といえるかもしれないけれど……。
とにかく、映画館自体はわりと近くにまだあると言えばあるのだけど、インターネットが使える環境があればわざわざ遠くまで足を運ばなくても家で視聴できちゃうしな~なんて思ってしまう。いまだとレンタルビデオ店に行く時間さえ面倒に感じてしまうくらいだ。
映画をはじめ、多くのコンテンツは値崩れを起こす一方である。
そして、この流れはもうたぶん誰にも止められないだろう。
……本当だろうか?
産業全体が低迷することは免れないだろうけれど、そのなかでも生き残る方向性はある。
たとえば、レコード自体はCDなんかに取って代わられてしまったけれど、それでも完全に絶滅したわけじゃない。愛好家がいる限りは必ず残る。
これは書籍についても同じことが言えるだろう。
単館系の映画館のように、本当に映画が好きで、映画のためならちゃんとお金を支払える少数のひとたちをちゃんとおもてなしできる環境を作っているところは強かったりする。
さて、本作に登場する人物は、牧歌的というか、良い人が多い。
一方で、今ではとてもできなさそうな行動も起こす。
エキセントリックで奇想天外ハプニングも起きるけれど、それらも含めて関わった人たちの記憶には良い思い出としていつまでも残ることだろう。
今のこのせわしない時代にこそ、この作品の登場人物たちが求められているのかもしれない。
長野県諏訪郡原村では、夏の間「星空の映画祭」というイベントが開催されています。
高原の豊かな自然の中、屋外にスクリーンを用意し、星空の下映画を楽しむものです。
この小説は、その映画祭の設立を元にした物語です。
とは言っても(おそらく)ノンフィクションではないと思いますが。
天狗とかシマウマとか三億円事件とかだったり、個性豊かな登場人物が出てきて、読者を飽きさせない話の流れだと思います。
それでいて丁寧な自然描写は、長野県原村の魅力が存分に伝わってくる物語です。
私も長野出身ですが、恥ずかしながらこの映画祭の事は知りませんでした。
しかし夏に帰省したら、行ってみようかなと思わせるくらい、映画と自然の魅力に溢れた作品でした。
長野県諏訪郡原村。八ヶ岳のふもとのペンション村。
そこで毎年の夏に開かれるのは、「星空の映画祭」。
能天気な男と現実主義な女がいて、三億円があって、
天狗がうろちょろして、シマウマをこっそり飼って。
そんなナンセンスでお洒落で軽妙な群像劇によって、
昭和のころの「スターダストシアター」が語られる。
時は流れ、平成も半分以上が過ぎたころにもう一幕。
1渡は立ち消えになった野外映画を復活させる為に。
「どこまで本当なんだろう?」と、思わずググった。
冷え込む夏の長野の星空と、映画「体験」に憧れた。
星空の映画祭に行ってみたい。この目で見てみたい。
読者をそう思わせる、巧みで素敵で爽やかな作品。