第7話

 現在の応接間は他の部屋と変わらず瓦礫と木片があるのみ。今更説明するまでもない状態だ。

 私は思い出していた。ここであった会話を。

 部屋にはいくつかのソファと背の低いテーブルが置かれていた。応接間の前で、私は騎士を中に入れ、お供の兵士を扉の前で待機させた。そして騎士をソファに座らせ、私も向かい側に座った。

「手紙でお伝えした通り、現在の領内は酷い有様です。飢え死にした人の腐乱死体がそこらじゅうに転がっています。少ない食料や物資を領民同士で奪い合い、殺しあっています。私はこの現状をどうにかしてやりたいのです。どうか、お力添えいただけないでしょうか?」

 騎士は真剣にそう言った。それに対して、私は答えた。

「だからここへ直談判に来たというわけか。だが、私にそんなことを言って何になる? 私はただの使用人だ。政務に関する決定権など私にはない。仮に私が旦那様に口添えをしたところで、領主に仇なす者として抹殺されてしまうだけだ。よって貴殿の要求にはどうあっても答えられぬ」

「いいえ、私は直談判のために参ったわけではありません。協力を申し出るために参ったのです」

「協力だと? 一体どういうことだ。私が何か企てているとでもお考えか?」

「そうではないのですか? 風の噂で敬愛していた奥様の毒殺を命じられたため、その命令を下した領主様に対して恨みを持ち、反乱を計画していると耳に挟みました」

「なにを出鱈目を……貴殿を今すぐに旦那様の前に突き出してもいいのだぞ?」

「いいえ、私は退きません。罰を受ける覚悟はできています。……このままいけば、この領地は滅びてしまいます。ですから、この身を犠牲にしてでも、ここで食い止めなければいけないのです」

「そうか……大した正義感だ。確かに私は旦那様に対して遺恨がある。それは認めよう。だが、反乱を企てたところで勝算はあるのか? なければただの無駄死にだ。やめておけ。この城には訓練された兵士もいる。貴殿らが少数で正面からぶつかっても勝ち目がないのは明白だ」

「そこで、貴方の協力が必要なのです。貴方にこの反乱が上手く行くように内部から手引きしていただきたいのです……」

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