これは、夜店とか浴衣とかの全く出てこない祭の話

  地元の青葉祭で『ハナタカ』なる役をやらされることになった和奏(わかな)。
 小学校のときにもやっているから、これは二度目なのだが、はて? この役、高校生でもいいのだろうか?

 どうやら、今年の青葉祭は、例年のものとは何かが違うようだが、だれも詳しいことは説明してくれない。???の連続で迎えた祭の夜。それは起きた……。

 武州青嵐さんの作品の面白さは、何といってもジャンル不明なところ。

 本作も、ラブコメか、伝奇ものか見当もつかない。謎が謎を呼びそうで、呼ばなそうで、ドキドキびくびくしているうちに話が走り出し、あっと気づいたら読み終えてしまう。

 おっかなびっくり、慎重に読み進めているつもりが、いつの間にか深みに誘い込まれていたようで、はっと気づくと、「え? もう終わり」と、現実の世界にもどってきた読者は周囲をきょろきょろする始末。

 日常のなかに、差し挿まれる非日常。それこそが、祭、なのです。

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