胃中に巣喰う ゴアグラインド

இ夢中の産血

 長机がある。ここは館の無駄に広い食堂だ。で、ミリの目の前にはステーキ。美味そうだ。意識すると、甘い脂と香ばしい焦げの香りが漂ってきた。

 ただ、ひとつ不満なのは、このステーキに一切と言っていいほど味がないこと。塩味、苦味、旨味のどれもがゼロ。

 しかしミリの隣に座るリージュ、彼女は違う。あたかも村娘を生贄に捧げられた大蛇のような顔つきで肉を頬張る。何が違う? ああ、そうか。リージュの傍には調味料と香辛料がたらふくあるじゃないか。それをもらえばいい。

「リージュ、悪いけど、そこにある塩を取ってもらえる?」

「はい」

 素っ気ない返事と共に、お望みの塩を獲得できた。待ちきれずに塩を山ほど振り掛ける。違う。「かぶせる」。

 塩辛……、うま……。

 でもこれだけじゃ、ちと物足りない。そうそう。リージュの傍には胡椒もあった。あれを貰おう。

「リージュ、もう一度お願い。そこにある胡椒、取ってもらえる?」

「はい」

 これこれ。この刺激臭が誘惑してきて我慢ができなかった。

 そういうことなので、蓋を取って山ほどふりかけよう。

 辛……、うま……。

 まだ、これでもあとひとつ足りない。あの、リージュが混ぜ混ぜしている秘伝のタレ。あれがない限り、このステーキはただただ塩っ辛いだけの塊じゃないの!

「そ、そのタレ、ちょっとでいいから頂戴?」

「いいわ。たーんとかけていいのよ」

 とのことなので、塩と胡椒の山が見えなくなるまで掛け掛け。

 うま、うま……。

 ……ん? どうしてだか、噛めば噛むほど血の味にまみれてきた。自分の口内が傷ついたのか、味の錬金術が起きたのかはわからないけど、こんなの、喰えたもんじゃない!

「ねえ」

 今度は、リージュが口を開く。

「あなたの前にある、ヨグ=ソトうス、取ってくれる?」

「え?」

 目の前には、相変わらずステーキがあるだけ。”ヨグ何たら”とは、これを指しているのか。

 そう、きっとそうだ。そうなのだ。

 考えがぎった刹那、ミリは血の塊を吐いていた。くろっと。

「ありがとう、ミリ。ヨグ=ソトぅスの完成ね」

 ぐじゅ、ぐじゅ、ぶぢゃ。ふしゃふじゃにゃぶ。……ぅふるうり、ひじゃん。

 うじゅくさひゃっと、めぃるん、まりぢくじゃっく。

 ぐじゅじゅ、にににに゛、かにゃー、なん。

 じゅっぽ、じゅっぽ、ぴちゃり、ぐじゅぐじゅしゅ゛しゅじ……。
















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これを電車の中で書くには勇気がいりますね! 隣の方が寝ていたのでできた芸当です。

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