★★★ Excellent!!!
ひとことでは言い表せない表現力と文章力 谷野 真大郎
とにかく面白いです。残酷で惨く艶めかしく、読めば読むほどそのダーティな魅力の深みにはまっていきます。普段はあまり過激な作品を好んで読みはしないのですが、そんな自分でも一度感じた「面白い」という気持ちは一切冷めること無く、最後まで続きました。むしろ、熱は上がる一方と言っても差し支え有りません。
まずこの作品の大事な部分は、キャラクター間の関係性です。感情の矢印、とでも言えば良いでしょうか。○○が○○に興味がある、○○と○○はいつも仲が良さそうに見える、○○は○○を殺したいほど憎んでいる……そういったものです。この作品において、この矢印は一貫しません。そして、その矢印の原動力となるものは好意とは限りません。目まぐるしく違う人物へと向けられて、複雑に絡み合って、常に変化し続けます。しかしながら難解かというとそういうわけでもなく(説明下手な私が人に教えることは出来そうにもありませんが……)、順を追って読んでいけば、余程国語が苦手だったという方でも無い限りほぼほぼ間違いなく理解できると思います。これは作者様の技術が途轍もなく優れているという他ありません。矢印が変化するタイミングは非常に的確であり、また因果関係が凄まじく洗練されています。全ての事象に意味があり、変化し続ける関係性はさながらピタゴラスイッチでも眺めているような気分。普段からあまり本を読まない自分だからこそ思うことなのかもしれませんが、丁寧に書かれた作品なのだなと読んでいる最中に何度も思いました。
また、この作品の魅力を語る上でこれに触れないわけにはいかない、という要素は他にもあります。刑務所という空間、それと性と暴力の表現です。この三つに関して、まだ人生経験の浅い自分にとっては現実で自分に起きた出来事と重ね合わせて読み込むことはできません。(一生縁も無いかもしれません)ですから、この作品におけるそういった情景や登場…
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