ある地域で噂の都市伝説

ある地域で噂の都市伝説12

――それから20日後

■6月29日　午前8時10分　本田亜里沙

「なんかね、なんかね。風花ちゃんのお父さん、行方不明になっちゃったんだって。ママが言ってた」

　亜里沙は前の席の由紀ちゃんと話している。

「へぇ、それで風花ちゃんも学校休んでるの？」

「分からない。でも噂によると、風花ちゃん口裂け女に襲われたみたい」

「え！　じゃあ、風花ちゃん連れて行かれちゃったの？」

「それも分からない。でも風花ちゃんのお父さんは連れて行かれて行方不明になってるんだと思う」

「えーやだ、こわい。風花ちゃん……大丈夫かな。家に行ってみる？」

「ううん、亜里沙もそう思ったけど、先生が見に行くから行っちゃダメだって。口裂け女が出るかもしれないから」

「こわいね」

「こわいね……」

　口裂け女の噂は学校中に伝わり、様々な説が囁かれていた。

　口裂け女は路地裏に出現する。

　口裂け女は「皆殺してやる！」と襲いかかってくる。

　口裂け女は全身赤いコートを着ている。

　口裂け女は包丁を持って襲いかかってくる。

　口裂け女は昔流行った口裂け女の娘である。

　口裂け女は実は男に捨てられた女の霊である。

　口裂け女は……

　口裂け女は……