素敵です

ファンタジー系の学園ラブコメであれ俺tueeeであれ、迷宮や身分制度といった要素は色々な作品で扱われています。
力を持たぬ弱い立場から見た時のそれらは、当たり前のように無慈悲で恐ろしいものですが、その辺りのダークな空気感というのは、展開だけでなくキャラクターの倫理観とか、空想上だけど血の通った道理や設定がないと決して生み出せないものです。この作品は、その全てが非常に高いレベルにあります。
いつ誰が死んでもおかしくありません。種族や身分に対する悪感情も安易なものではなく、歴史から来た文脈を感じます。主人公は強者から一目置かれる事がありますが、そこにあまり説得力を感じないので、逆にリアルです。
常に描かれる理不尽や、モヤモヤした閉塞感が解消される事はありません。主人公は迷宮と戦いの中で成長していきますが、あくまで地続きの毎日なので、刺激的な出来事が起きても、主人公の人生が物語のように好転することはありません。迷宮を取り巻く様々な人間関係を描いた、群像劇のようなファンタジー小説です。

間違いなく高いレベルにあるし、非常に素敵な作品ですが、ただ一つ、オタクチックなハーレム要素が、作品の筋をぶらしている気がします。逆にそれがいいのかもしれませんが……。

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