彼が死んで石になってから、10年もの間、私は生き続けてしまった

荒れ地の民は同胞が死したとき、火葬をおこなう。
遺灰からは、故人をしのばせる石が取り出される。
石は、遺された者の身を飾り、その人生を見守り、
ただ1度だけ、故人の生前の姿を取ってみせるのだ。

婚約者を亡くした、誇り高く美しく炎のような娘。
赤い石になってしまった愛する人への想いを抱き、
彼女は、まわりの誰とも違う孤独な生き方を選ぶ。
鼻つまみ者の彼女を見守る男が、ひとりだけいた。

静かで、流れるように美しい語り口でありながら、
真っ赤な石に象徴される烈しさや厳しさがあって、
キラキラと華やかな恋模様ではなく、力強い愛が、
彼女の生き方と再会と別れを通して描かれている。

短編ですが、とても濃密でした。
うつくしかったです。