渇きを満たすは神の水、知るなと願い潤い施す神の心

願いを叶える代償に、何かを失う――そんなお話は多々あります。

けれど考えたことはありませんか?
そこにどんな力が作用し、誰が何がそのような結末を全うさせたのかを。

この物語は、ただ幸せと不幸せを等価交換した者達を描いたものではありません。
その奥に潜む『知ってはならない、知られることを望まない存在』について、切り込んでいます。

私達の心は渇いている。けれどそれを満たすには、別の何かの力を奪わねばならない。誰かから、何かから水を搾り取らねばならない。

我々は無意識の内に、自らの心だけでなく身勝手に生み出した存在を消費して生きているのかもしれません。
それらが知られようと働きかけないからといって、知ろうともせずに。

知るということは、無遠慮に詮索し土足で領域に踏み込むこととは異なります。

知られたいと願っていないのなら、放置して無視するのではなく、そっとしておこう。けれど彼らまで渇いてしまわぬよう、今自分にあるものに感謝し、自分の力で潤いを開拓して生きよう。

目が覚めるように鮮烈で、噛み締めるほどに苦みを伴った温もりが広がる味わい深いお話でした。

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