十一の物語を詰め込んだ短編集ですが、人類が終焉に向かってゆく様を描いた連作のようになっています。
とはいえ、それぞれのお話は独立していますし、時系列も綺麗に並んではいません。
どこから読んでも楽しめるようになっています。
でもせっかくなので、私は作者さまが並べてくださった順に辿らせていただきました。
終焉に向かう道筋は楽しいものではありません。
この作品群も仄昏さと悲哀を纏っています。
それでも優しさや温かさを感じるのは作者さまのお人柄でしょうか。
最後の物語を読み終えたとき、
ああ。やっぱり順番に辿ってよかったなあ、
と思いました。
もちろん単体で楽しめますが、十一話目だけは、ぜひ最後に残しておいてみてください。
人類の辿る道を。
作者さまが最後に見せてくださる景色を。
多くの皆さまにご堪能いただけたらと思います。
SFショートショートを集めた短編集。
近未来が舞台ですが、どちらかといえば悲観的な未来像です。
科学の進歩や記憶、環境、人類そのものがたどり着く先を、意外な展開を交えながら、淡々と読みやすい文章で書かれてあり、ちょっとした休憩時間にでも、一話ずつ読んでいける内容です。
悲観的とはいえ、絶望とは違う余韻のあるラストが多く、ハッピーエンドではないにしても、心にじんわり染みてきます。
個人的に気に入ったのは「ウサギの餅つき」と「被験者の憂鬱」。
あと「最後の花火」も全体に流れる哀愁ある雰囲気が良かったです。
とはいえ、すべて面白く魅力的な作品群です。
単純じゃなく、ひねりのあるオチが好きな人にもおすすめです。