でも、巨乳ですよ?

 ため息が出るほどの美貌を持った勇者ルリジオは、格の高い女神の加護を受けていて、どのような魔物にも負けることはありません。

 数々の魔物を退け、多くの民を救い続ける彼は紛れもない大英雄、なのですがーー



 タイトルから、お下品な小説だと思った人も多いのではないでしょうか。実際この小説は、まさに狂っているとしか言いようがないほど「巨乳」に執着するルリジオの物語であり、ありとあらゆる語彙で巨乳を褒めそやすルリジオの狂気はコミカルですらあります。しかし、この小説は単なるコメディ小説ではありません。

 ルリジオは、「巨乳狂い」でありながら、全人類、いや、全種族に対してスタンスは変わらないのです。種族が違ったり、人に害なす者であっても力任せに蹂躙することがない彼は、どこまでもまっすぐだと感じました。

 彼の判断基準はただ「巨乳であるかないか」それだけです。

 彼の一切折れない主義に、最初笑っていた私も読み進めるうちに尊敬の念を抱くようになりました。

 狂気も突き詰めると天晴れである、と知らせてくれた小説です。


(「主人公が我が道をゆく小説」4選/文=芦花公園)

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