豊富な知識に基づいた描写が魅力です

 現代サスペンスものには現実感や、具体性が重要だと思うのですが、本作品はそれらが、非常に緻密かつ丁寧に表現されていると思います。
 そのため、違和感が全くなく、いかにもあり得そう、という緊迫感にも似た震えすら覚えてしまいました。
 ストーリー展開も、淀みなく流れていて、必要な場面だけが冷徹な意図により抽出されている、ということがよく伝わってきます。テンポの良いシーンの移り変わりなども、それの一因となっていて、全体的に、飽きさせないようにするためのテクニックが素晴らしいと思います。