第8話 見えない少女

俺は、天空そあらと別れてから急いでそれでいてなるべく少女を揺らさないように急ぎ足で澄海すかいの家に向かった。

輝音らいとと澄海は、すでに家に着いていてお茶を啜りながら自分達の帰りを待っていたらしい。


 「遅かったな。……天空はどうした?」


 「天空ならもう少し探してから来るらしい。そんなことより生存者が居たぞ!」


そう言うと、輝音と澄海は笑みを浮かべて先を促す。


 「それで!?その生存者は?」


 「この子だよ。」


そう言って俺は抱き上げていた少女を床にゆっくりと下ろす。

すると、何故か輝音が眼鏡を拭いては着けて拭いては着けてを繰り返しやり何回かやったところで、不思議そうに龍神りゅうじに問いかけた。


 「なあ、龍神よ。俺たちは、真面目にやってるんだ。おふざけは天空だけにしといてくれねぇか?」


それを聞いて俺と澄海は、顔を合わせ頭にクエスチョンマークを浮かべて輝音に聞いた。


 「もしかして、お前この子が?」


まさかと思って澄海が言うと困ったような苦虫を噛み潰したようなそんな顔をされてしまった。


 「いや、まあ良いんじゃね?」


 「フォローが雑いよ!?というか、視えてないってことはこの子幽霊ってことじゃね?」


「「あっ」」


まさか気付いていなかったのかそう思ったが、言って本題から遠ざかるのは、今の状況から見てわかるようにあまりよろしくないからツッコミたかったが我慢して話を進めることにした。


 「そんなことより、例え死んでいたとしても覚えているかもしれない。俺たちが知らない何かをしているかも。」


 「ま、まあ、確かにそうかも知れないが、俺は視えないしましてや、聞こえるかすらわからない。」


 「まあ、視えるか視えないかはこの際あまり関係ない。もし、聞こえないようなら聞いたことは俺たちが伝える。」


そんなことを話していると少女がゆっくり瞼を開け起き上がった。


 「おっ、起きたか?」


 「起きたのか!?」


輝音は、その様子が視れないので少し興奮ぎみに言った。

その様子に少し澄海は怪訝そうにする。

まあ、起きたばかりの人にいきなり大声を出したらお耳にあまり優しくないだろう。幽霊がどうか知らないが───。


 『……うるさい。』


 「だそうだ。」


どうやら、幽霊的にもお耳には優しくはないらしい。というか、輝音にも聞こえてたらしく目を見開き驚いていた。


 『……ここどこ?』


少女訪ねると、我を取り戻した輝音が話し掛けた。


 「さっきは悪かった。ここは、俺たちの本拠地的な場所だ。そうだな……。まず、君の名前を教えてくれるか?」


輝音が訪ねると少女は名前を口にした。


 『私の名前は、小林こばやし菜緒なお。視た通り幽霊よ。』


そう言うと彼女は脚がないのにも関わらず歩いて、性格には浮いて龍神の所に行った。

龍神は、少し驚いていたが嫌がる素振りはなかったのでそのまま菜緒は龍神の膝に座った。


 『何を驚いているの?』


 「いや、まさかこんな美少女が俺の膝に腰掛けてるとは思わないだろう?」


 『あら?嫌だったかしら?』


 「まさか!!超嬉しいです!!!!」


素直なやつめと澄海と輝音が呆れながら言いそうのなったが、あえて言わないことにした。


 「でも、何で俺?」


 『あら、恩人の顔ぐらい覚えているわよ?死んでるのにわざわざ助けにいてくれたこと感謝している。ありがとう』


そうお礼を言って微笑む彼女はとても死人とは思えないほど眩しかった。

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