最終章 さようならまた明日

第9話 再開と別れ

 「たっだいま~!」


どうやら、うるさい奴が帰ってきたようだ。


 「おう、どうだった超絶ちょうぜつ大馬鹿野郎おおばかやろう。」


 「帰っていきなりのディスは心が痛むぜ!そして、生き残りは龍神がお持ち帰りした少女しかいなかったよ。というか、あの子起きた?」


そう報告をした。まあ、あの大災害だ生きてる人などいないだろう。

むしろ、幽霊だが少女を見つけただけでも良いだろう。


 「心が痛むかはどうでも良いが、お持ち帰りとか変なこと言うなよ!」


 「「『そっちかよ!』」」


 「というか、少女起きてたんだ!みんなびっくりした?」


そういう言い方をするということはどうやら天空は、少女が幽霊ということは知っているらしい。


 「お前知っててやりやがったな!?」


 「野郎!ぶっ殺してやる!!」


 「野郎じゃねぇし、ぶっ殺さないで!幽霊が、もう一人増えちゃうから!?」


 『あら、一緒に幽霊生活をエンジョイしましょうよ。』


なんか、もううるさい。

仕方ないので、大きな咳払いをして本題に戻す。


 「んんっ、ゴホゴホッ!!!!ゲッホッゲホ!!!!!取り敢えず!振り出しに戻るんだが!」


 「すげぇ、咳払いだな。大丈夫かトミー?」


 「振り出しってなんかあったけ?」


 『そんなことより、お腹空かない?』


 「幽霊なのに!?」


もうやだ。心折れそうになったその時久しぶりに聴くスマホの着信音が鳴った。


 「で、電話だ!」


 「マジか!?誰からだ?」


そう言われ慌てて誰からの着信か調べた。その宛名は内山と書かれていた。


 「水愛あくあからだ……。生きてたのか。」


 「あれ?言ってなかったけ?」


 「お前らが悲痛な顔で喋るからだろうが!!!!」


 『そんなことより出ないの?』


そう言われツッコミを後にして慌てて出ることにした。


 「もしもし!水愛か!?」


しばらく無音が続いたが、すぐに雑音と共に声が聞こえてきた。


 《―――もしもし!?聞こえる?》


電話越しに聞こえてきたのはやはり水愛の声だった。


 「ああ、聞こえてる!無事だったんだな!?」


 《そんなことより、この声みんなに聞こえるようにスピーカーにして!状況を説明するから》


そう言われスピーカーをオンにしてみんなに聞こえるようにした。


 「スピーカーにしたぞ。」


 《じゃあ、今何が起こっているのか説明するから落ち着いて聞いてね?》


そう言われ皆スピーカーから聞こえる水愛の声に耳を澄ました。

水愛は、一呼吸置いてから話始めた。


 《まず、このは私たちが住んでいる地域のみで起きているの。でも、誰も救助には来ないのは、この地域で起こっていることはあっちには何の変哲もない感じに見えてるから。そして、仮に気付いたとしても此方からの補償はできない。》


 「ちょっ、ちょっと待って!難しくて分からないんだけど!?」


頭の悪い天空にはどうやら理解できず、値を上げたようで水愛に抗議した。

何時もならそれを無視して水愛は、続けるだろうが今回ばかりはそうふざけてもいられないらしく天空に、分かりやすく説明し始めた。


 《じゃあ、天空のために分かりやすく言うけどこれは、事件つまり誰かがこの地域を焼き野原にしたの。それで、この事件は私たちが住んでいる地域限定で起きていてでも、それは周りには普通の景色にしか見えないようになっていて救助には来ないし来れない。》


 「な、なるほど~。何となく分かったけど、どうして他の人たちには見えないの?」


確かに、天空が言う通りそんな非科学的なことが出来るわけがない。

一体どうやって、周りに見えないように出来たのか。


 「ていうか、此方ってことは水愛は今外にいるのか?」


 《ちょうど、今静岡にいる。》


 「じゃあさ、何で俺たちの状況が分かるんだ?」


 《それについて、説明したいけど実際に会わないことにはこの話は信じてもらえる気がしないから取り敢えず、彼女に会ってみて。》


水愛はそう言うと場所を示す。


 《えっと、今彼女は……って、なんだもう会ってるじゃん。》


 「え?俺たち以外生きてるやつに会ってないぞ?」


澄海が、疑問に思い言うとすぐに答えは帰ってきた。


 《ああ、違う違う。そこに居るでしょ?半透明の美少女が、多分龍神か天空の膝の上に居座ってるんじゃない?》


そう言われ皆一同が龍神の膝の上に腰掛けている半透明の美少女を見た。


 『あれ?言ってなかったけ?テヘッ!』


少女は、にこっと笑みを浮かべてそう口にした。


 「いや、テヘッっじゃねぇよ!?そういうことは先に言えよぉぉぉ!!!」


 『めんどくさ───気を失ってたから。』


 「今めんどくさいって言おうとしたろうが!」


 『テヘッ?』


 「「「テヘッじゃねぇ!!!!!」」」


そう突っ込んでいたが、流石に今はそんなことをしている暇はない。助けが来ないということは、自分達でこの事件を解決しなければならないということだ。


 《兎に角、そこの少女からの連絡で今の状況を知っているわけ。それと、私もそっちに向かうからそこから動かないでね。》


 「は!?いや、そっちから来れねぇんじゃないのか!?」


 《それは、そこの少女がってもう名前分かるよね?奈緒の力があればこっちこれるんだよ!詳しくは、またあとで、今向かってるから駅前に集合しといてね!?》


そう言って水愛からの連絡は切れた。

かけ直そうとしたが、此方からはやはりダメらしくスマホの画面には圏外の文字が出ていた。


 「しょうがない……駅前行くぞ。」


そう輝音が、言って皆やっと動き始めた。





            ∗


            ∗


            ∗


            ∗


            ∗





駅前に着くと人影があった。近付くにつれて頬を膨らませてるのがはっきりと見えてくる。


 「ごめん水愛。少しごたついて遅れた。」


 「遅すぎ……。はあ、もういいや。今はそんなことより大事な話があるの。」


 「大事な話って?てか、そういうのはさっき話しておけよな。」


 「こっち来るときに分かったの。それで、さっきこの地域を焼け野原にした張本人を見つけたわ。」


そう言うと皆驚いた顔をしたが、奈緒だけがその話を聞きしかめっ面をしていたがそれも一瞬ですぐに澄ましたような顔をしていた。


 「それで?そいつ取っ捕まえるのか?」


そう龍神が聞くと水愛は、自信ありげに頷いて作戦を話始める。


 「あいつは、さっき倒壊したビルの地下に入っていくのを見たの。多分彼処に、この現状を生んだ原因があるはずだからそれを破壊してついでにそいつも捕まえる。そのための武器だって手に入れたんだから!」


そう言うと水愛は、肩に下げていた鞄から拳銃を取り出し見せる。


 「こんなの何処で手にいれたんだ!?」 


 『私の力があればこんなのちょちょいのちょいさ!そんなことよりさっさとあいつ殺しもとい捕まえに行こうよ!』


 「お前物騒だな。まあ、そうだなさっさと行こうぜ!」


龍神が言うと水愛がその場所まで案内してくれた。

そこに着くまでにそれほどの時間はかからなかった。

ビルは、聞いていた通り倒壊していて良く目を凝らせばその倒壊したビルの瓦礫の奥に下に伸びた階段が見えた。


 「あそこかぁ~。何か、下に下ったら崩れて戻れないとか起きそう……。」


 「そんなゲームみたいなこと起きてたまるかよ!まあ、確かに念のため誰か残っとく方が良いかもな。」


そう提案すると輝音が挙手して指名した。


 「やっぱ、水愛じゃね?」


 「私は、行くわよ。誰が何と言おうとね。」


 「じゃあ、あと残るのに相応しいのは澄海?」


 「そうだな。俺は、体弱いしそれにお前らが入れば水愛くらいなら何とかなるだろ?」


 「なにそれ私が足手まといみたいに……。まあ、現に足手まといなんだけど……。」


そんなことを話ながら先に進んでいく。ビルの前まで来たら澄海とは別れ四名+αで、地下への階段を下っていった。

前には剣道部の天空が、水愛が気をつかってか家にあった木刀を天空のために持ってきていた物を中段に構えて進んでいた。

暫くすると、開けたフロアが見えてきた。


 「誰もいない?」


 「もしかして、もう何処かに行ったとか?」


 『いえ、まだいるわよ。ほら気を緩ませるからあんた死んだ。』


そう奈緒が言うと水愛の額を何かが突き破りそして水愛は倒れた。


 「水愛!!!!」


続いて二発目に天空に向かってきたが、紙一重で回避する。続いて四発五発と立て続けに狙われ続けため階段まで避難し止むまで待った。


 「何処から撃たれているのかさえ分かればなぁ……。」


 『それなら、あそこの右奥からよ。』


そう言って音が止んだ時に顔を覗かせ奈緒が、指差した方を見る。


 「よ、よし!任せろ俺が殺る!」


そう言って輝音が銃を構えて撃つ。


見事相手の額に命中し絶命させたことを確認してから男に近づいた。

男の胸元のネームプレートには、小林こばやし智也ともやと書かれていた。

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