君たちは、いつも僕らのそばにいた。小さくて広大な昆虫の世界へようこそ

みなさんは虫取りをした経験はあるだろうか。チョウに見惚れ、セミの抜け殻を集め、カブトムシに憧れ、これはそんな思い出が忘れられない大人たちの物語だ。

主人公のケイとその妻スミレさんは「虫屋」だ。虫屋といっても虫を売っている人ではなく、虫好きのなかでも特に筋金入りの昆虫マニアをそう呼ぶそうだ。

昆虫の研究者である二人が、標本採集のフィールドワークに出向き、真っ暗な山奥でライトを点けるとセミやカブト、ハチやカメムシ……種類もサイズも様々な虫が集まってきて、昆虫マニアが語りだす。

次はどんな奇妙な虫がやってくるのか、どんな面白い虫の話が聞けるのかと期待や想像が膨らむ。

同じ虫屋仲間のハチ専門のスガルさん、ガ専門のマユさんなども加わり、いい年をした大人たちが虫取り網と籠を持って虫を追いかけて一喜一憂する姿は、なんとも無邪気でクスクス笑ってしまう。

「ヨナグニサンってどれだけ大きいの?」、「ルリジガバチって本当に瑠璃色なの?」、作中に登場する昆虫たちが気になって検索サイトで調べていると、幼い頃に『ファーブル昆虫記』を読んだワクワク感を思い出した。

(『夏色の物語』特集/文=愛咲優詩)

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