廃墟の中でも希望を見出す意志の尊さ―。

どのシーンも細やかに構築されているので、想像を描くほど映像が浮かび上がってくるような言葉運びが魅力的な物語。この世の惨劇にはすべて発端があることを伝えようとする強靭な意志と世界観に心動かされます。SFとして物語を構築していく上での作者のテクニックには映像的な趣向だけでなく、生物学、物理工学、薬学、天文学等の知識と論理的観点を駆使して、物語の中に取り入れ、登場人物一人一人に物語を構築していく上での役割を与えていると思いました。人工知能AIの進化で拡大しているロボットの話題も連想させ、AIと人類が共存していくためにはどうしていくべきか省察していくことの大切さも訴えかけているように思いました。

それから、SFの命題として未知なる脅威との闘いが大前提にあると改めて思ったのですが、大いなる意志に向かってストーリー全体が繋がっていることが読めた時にそれまで、詳細に描かれていた各章の内容に意味が生じて、悲しみに包まれた惨憺たる場面をも描き上げた作者の並ならぬ筆力の強さと努力の過程を思いました。

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