7-3. おまけ3
~~ 4-1. 勇者と魔物と3Dプリンタと法的諸問題 ~~
【営業秘密?】
魔法ではないですが、「営業秘密」を保護する法律として、
現世の日本には、不正競争防止法が有ります。
「秘密性」「有用性」「非公知性」の3つを満たしたものが、保護される営業秘密。
で。
最近のIoTやらAIやらで、「データこそが大事じゃね?」ってことになって。
企業「でも……秘密を脱したら、保護されないんでしょ? だったら門外不出にするわ」
ってやられちゃうと、AIを賢くするためのデータが外に出てこないってんで、
秘密性が無くなった情報も、保護するようにしよう、という動きになってます。
(技術管理性、限定的な外部提供性、有用性の3つを満たせば)
~~ 5-2. オーイ、教授 ~~
【新たな情報材検討委員会 報告書】
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/johozai/houkokusho.pdf
平成29年3月に出された上記の報告書ですが、注目して欲しいのは、章立て。
第1が「データ」、第2が「AI」。
AIよりも「データの利活用」の方が先に来ている点。
それだけ、ビックデータを重要視してるんだろうな……って、著者からは見えます。
【AIが生み出したコンテンツの著作権】
弁護士・福井献策先生の解説
https://japan.cnet.com/article/35115900/
沢山のポイントがぎゅっとまとまっているので、AI絡みが気になる方は必読!
~~ 5-3. 金属は人間か? ~~
【サルは著作者になれるのか(現世の外国)】
サルが自撮した写真の著作権は、サルにあるのか?
訴訟がありました。和解で終わっています。
参考URL:
https://japan.cnet.com/article/35107189/
【川に法的人格を認める話(現世の外国)】
なんと! 『川』に法人格が認められたケースがあります。
参考URL:
インド
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08H5I_Y7A500C1FF1000/
ニュージーランド
http://www.afpbb.com/articles/-/3121661
~~ 5-5. 私がニョイニウムだ! ~~
【成りすまし問題】
『人間の寄与無しにAIが生成した著作物には、著作権は発生しない』
……なーんて話を、5-3.でしました。
でも。AIを扱う人の人情からすると?
「
って、なりそうですよね……。
そのために取りうる手筋、それは。
AIに創作物を
例えば、絵を他人が見たら、本当に人間が描いたのか、AIが描いたのか、分からないこともあり得るでしょう。
そうすると……?
「これ、俺が作ったから、
こう主張されたら、覆せるかなぁ?
「いや、AIが作ったんだから、権利なし(パブリックドメイン)だよ」
みたいな反論、出来る?
(使ったAIがどんなのかを調べて、『人はワンボタンでやってるだけじゃん。人が個性発揮してないじゃん』って主張立証する感じ? でも、そのAIは、こっちじゃなくて相手方が握ってるんだけどね?)
そして。
この成りすましが出来ると。
他の人ががんばって、何枚かの絵を人力で描いているその時間に。
別の人はAIをたくさん使って、数百枚とか、数千枚の絵を描けたりも……しそうですよね。今後のAIの能力次第ではあるけど。
一方、著作物(絵)の受け手、鑑賞者にとっては、出来た絵がよければそれで良い。
ううむ……。
こう考えると、人力で描いている人が、めっちゃ不利に思えるんだけど、どうでしょう?
(それが良い悪いの論点には踏み込みません。「格差ふざけんな!」って考えの人も居るでしょうし、「格差出て当然でしょ?」って考えの人も居るだろうから)
参考URL:
https://japan.cnet.com/article/35115900/3/
「クリエイターの萎縮」「AI版パテント・トロール」
なお、上記の成りすまし問題についての、平成29年3月時点での国のアンサーは。またしてもコレ。
(新たな情報材検討委員会 報告書)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/johozai/houkokusho.pdf
p38,39あたりの、「・AI創作物の権利主張・濫用の可能性」の項。
超ざっくり要約すると、『まだわかんねー』。
さて、社会は、どう進展しますかね……?
AIがたくさんコンテンツを生み出した時、あなたは?
~~ 6-2. 二つの戦い ~~
【翻案とは】
江差追分事件最高裁(平成13年6月28日)
以下、判決要旨1、判決要旨2を引用します。(傍点、ルビは筆者)
<判決要旨1>
言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に
<判決要旨2>
既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。」
以上の引用を元に、整理します。
(1)侵害が疑われているソレが、元の著作物の「本質的な特徴を直接感得」できるかが肝。
(2)表現じゃない部分は引き算して考える。表現上の創作性が無い部分も引き算して考える。
->
これを、筆者の解釈で、超訳します。
「元の著作物の特徴(ありふれてない表現、個性的な表現)ってそもそもどこなのよ? その特徴が、相手のソレに埋まってるんですか?」
……やっぱり、「表現上の個性」ってのが重要になってくるわけです(私見)
【弱いAIによる創作には、著作物性が無い(再び)】
何度も申し訳ありません。
ここまで読み進めて来た方になら、コレが書けるので、書きます。
平成29年3月の『新たな情報材検討委員会 報告書』にて、
弱いAIが生み出した創作には、著作権が発生しないとされています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/johozai/houkokusho.pdf
どうして、著作物性が無いのか?
それは。
著作物性の源泉たる、「人の個性」が発揮されていないから。
(弱いAIは『道具』なのであって、人扱いをしないから)
ここで。
上記報告書のP36を引用してみます。(傍点、ルビは筆者)
(引用)
AI生成物を生み出す過程において、学習済みモデルの利用者に創作意図があり、同時に、具体的な出力であるAI生成物を得るための創作的寄与があれば、利用者が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用して当該AI生成物を生み出したものと考えられることから、当該AI生成物には著作物性が認められその著作者は利用者となる
一方で、利用者の寄与が、創作的寄与が認められないような
(引用ここまで)
……ほらね?
著作物性の源泉においても、
著作権侵害における『翻案』においても、
そしておそらくは、「パクリ」という、形の見えない概念においても。
やっぱり。
「人の個性」が、肝になっているんじゃないかなぁ?
そう、筆者は思います。
~~ 6-3. 最終話 異世界電車は寄席の席 ~~
【まとめ】
6-1.のタイトルを『落語発 著作権経由 個性行』とした意図は。
着地点を明示したかったのでそう付けました。
この『異世界著作権 だいなし物語』は、スマートニュースコンテストに応募しています。レギュレーション上、評価されるのは30話まで。
なので、31話目以降である、ここの「7.おまけ」は、コンテストと無関係に、カクヨムに居る貴方に向けて書いています。
何が言いたいか?
それは、『ラノベ郵便事故』の時と同じです。
創作者である貴方の、その『個性』は、創作においてだけでなく、著作権法においても、とても重要な要素になっています。
だから、がんばってください。
個性に気付いてくれる人は、きっと居るはずですから。
以上、ありがとうございました。
異世界著作権 だいなし物語 にぽっくめいきんぐ @nipockmaking
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