半ばまで読了です。
覇王・信長の実妹イチと吸血鬼ジョエル。彼女がタイムスリップに巻き込まれて現代日本に流され、ジョエルと出会って惹かれていくというというのが骨子になっています。
限りある人と時間に限りのない吸血鬼。2人の抱える価値観や苦悩が丁寧に描かれており、特に現代に来たばかりで様々なものに戸惑うイチの反応は読んでいて新鮮です。一方でイチへ世話を焼いているうちに惹かれていきながらも彼女を同族にしたくないジョエルの苦悩もまた物語に深みを与えています。
しかし、その前に立ちはだかるのは当事者たちの苦悩ばかりではなく得体のしれない悪意もまた潜んでいます。分かたれる2人の運命は何処へたどり着くのか…。
後半も楽しみです!!!
時を超え、現代の日本へやってきたのは天下一の美人『お市姫』。
戦国大名『織田信長』の妹である。
近江の戦国大名『浅井長政』との政略結婚を控えていた彼女は、
ひょんなことからタイムスリップをしてしまう。
そんな彼女を助け、一目で恋に落ちてしまったジョエル・ロイド。
彼は吸血鬼でありながら、その本能を抑制し、
お市姫の血を吸わないことを誓う。
吸血鬼であることを隠すジョエルと、優しい彼に惹かれていくお市姫。
しかし、周囲の状況は、そんな二人の恋を許しはしなかった。
家畜が被害に遭い、吸血鬼伝説の噂が流れる。
果たして、二人の出会いは運命なのか?
それとも、神の悪戯か?
歴史を揺るがす恋の結末を是非、読んでみてください。
ロマンの塊です。
ホラー、SF、歴史、恋愛…ありあらゆるものが詰め込まれ、宛ら宝石箱の如く輝く物語です。
時代は現代、12世紀、16世紀と、場所は日本、ヨーロッパと移り変わりつつ展開する物語は、時に二人の記憶すらも奪う事がありますが、それを乗り越える絆を浮き彫りにしてくれる文体が、兎に角、引き込んできます。
ふと思うのは、フィクションだからこそ書けるものがある、という事です。
吸血鬼なんて存在しない、お市の方は北ノ庄城で自害した…歴史の教科書には、そう書かれていますが、このヒロインを昇華したいと思った人は少なからずいると思いますし、私もその一人でした。
それをしてくれた――ただの悲劇で終わらせず、ドラマチックに、また少なからず誰もが持っている絆の強さを見せてくれた…そういう意味でも、涙が零れる重いです。
「たとえこの身が灰になったとしても、俺は何度でも君に愛を誓うだろう」このセリフをいえる資格のある事は、果たして神に選ばれた幸運なのでしょうか? 自分が選ばれてないなと思う私は不幸なのでしょうか?
それは分からないけれど、この物語はハッピーエンドです。涙では終わりません。
この宝石箱に収まる瑠璃になる涙だったとしても、笑顔に勝る輝きってないですね。
物語は織田信長の妹で知られるお市の方が現代日本にタイムスリップして、同じく中世ヨーロッパから時空を超えてきた吸血鬼のジョエルとセバスティに拾われるところから始まります。
戸惑いながらもお互いの事を理解するうちに惹かれあうジョエルと市ですが、実は他にも中世からやってきた吸血鬼が潜んでいて……!
吸血鬼でありながらお市の血を吸おうとはせずに守ろうとするジョエルと、元々戦国時代で焼け落ちる城の中で死ぬ運命だった市が悲劇を何度もくぐりぬけながらも互いの愛を深めていく物語です。
奇想天外な発想ですが、戦国時代の史実も絡めながら吸血鬼と人間の姫のロマンスとしてまとめきっています。
一風変わった恋愛ものが読みたい方におすすめです。
ストーリー作りの面白さはお墨付きの作者の物語です(もちろんストーリーばかりではないですが)。
今回はなんと吸血鬼と戦国時代の姫の物語。
しかもこの姫は信長の妹・イチです。
この不思議な出会いをもたらすものが、極限状況下で発動するタイムスリップ。
出会うはずもない二人ですが、偶然なのか宿命なのか、同じ時代同じ場所にて出会うことになります。
貴族的な優雅さと、美貌をもつ吸血鬼のジョエル。
戦国の姫でありあまりに無垢な美しさをもつイチ。
二人の出会いは現代の北海道。そこで運命的な出会いを果たした二人は……
というのが入り口なのですが、読みやすい文章、脳裏に展開される映像の数々に、まるで映画でも見ているように物語は進んでいきます。
最初はミステリアスで奇妙な殺人事件、そこから舞台は戦国の世に、さらには……と、時を超え、舞台を超えて、二人の物語が続いていきます。
とにかく奇抜ともいえるこの設定が、読み進めるほどに嵌まっていきます。
そして波乱万丈の物語をキャラクターとともに歩むことで、いろいろな景色が見えてくるようです。
吸血鬼ものの好きな方はもちろんのこと、沢山の方が楽しめる作品だと思います。
ぜひ読んでみてください。