格闘家は真実と妄想の狭間で戦う

総合格闘家として活躍中の高橋枢名は、ある日奇妙な夢を見る。それは異世界で自分がモンスターと戦う夢だった。
さらに前世で仲間だったという奇妙な男女と遭遇し、徐々に前世の記憶が鮮明に甦るように……
その一方で、自分の記憶とよく似た教義を主張する宗教団体の存在も知ってしまう。

そして枢名はその宗教団体を調査するうちに、一つの可能性に気付いてしまう。
自分が異世界の記憶だと思っている物は、試合でダメージを受けた脳が原因のただの妄想なのでは……?

どこまでが真実でどこまでが妄想なのかわからないまま進行するストーリーに魅了され、一気に最後まで読まされてしまう本作。
序盤から張られていた伏線が終盤で見事に収束しているのは実にお見事。

ストーリー面以外でも格闘技の試合描写がとっても熱かったり、枢名の前世と現世をつなぐヒントが「蠅」だったりと、他の作品ではあまり見られない要素が随所に散りばめられているのにも要注目だ!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)