隣は血を吸う人ぞ!?

このお話は吸血鬼男子が主人公なのです。そう、ドラキュラです。その時点で血走る恐怖に身もよだつ系の物語を思い浮かべるものです。夜な夜な生贄となる美女を狩ってはその生き血を吸い、ウヒヒヒと冷酷に笑う、そんな吸血鬼……のお話なのねきっと、と思うものです。はい、私もそうでした。

私の今までの決して短くはない人生の中で読んだ吸血鬼ものでお気に入りはTwilightでして、全巻読破、映画も五作全て、パロディ映画まで全部観ました。(ちなみに私はTeam Edwardです。そんなこと誰も聞いてねえ? はい、申し訳ございません。)そこに出てくる吸血鬼の皆さんはなんともまあハイスペックで、ほぼ無敵、不死身、美貌の持ち主という完璧なお方々なのです。

が……このお話の主人公の吸血鬼くんは、超がつくヘタレ。日々頑張っているのに全く報われなくて、読者の同情を誘うと申しますか……彼がこんなのはお父さま譲りなのでしょうか……本当に心優しい少年なのです。優しすぎるので、気の強いヒロインに振り回されています。吸血鬼としての本領も発揮することはするのですが……

作者さまは、現代社会にひっそりと隠れるようにして生きている吸血鬼を書かれています。周りと違うということで差別やいじめに遭ってしまうため、吸血鬼であることを隠して生きている彼ら。特に理由も無くただ吸血鬼を忌み嫌う人々。現実社会には吸血鬼ではなくても同じような問題が潜んでいますね。コミカルなこのお話ですが、根底にはこんな真面目なテーマも流れています。

とにかく、本編から番外編まで大いに楽しめました。皆さんもどうぞ健気な主人公を応援してあげてください!

その他のおすすめレビュー

合間 妹子さんの他のおすすめレビュー81