第10回 【ガラス瓶】ラジオ ※自主企画用

僕 手紙を瓶に入れてっと……。よし、ここから投げれば……


刑 君、こんなところで遊ぶのは危険だよ?


僕 け、刑事さん? どうして犬のおまわりさんを連れて崖にいるのですか


刑 このあたりで瓶の不法投棄をしている輩がいるんだ。不法投棄は良くないだろう? だから私は犯人を捜しているんだ。


僕 そうなんですか。僕は頻繁にここに来ますけど、そんな怪しい人を見かけませんね。


刑 そういえば君、ガラス瓶を持っているね


僕 ……あ、この構図サスペンスドラマでみたことある。囲まれちゃってるねえ


刑 犯人はあなたですね


僕 誤解です! 僕は手紙をおくっているだけです! く、来るな……ああー!





【『僕』と『君』の『ガラス瓶』ラジオ】





僕 ボトルメールを海に放っていただけで刑務所にぶち込まれるなんて


君 貴方がヘンなことをしたからよ


僕 そうだとしても誰も傷つけていない。迷惑だって…かけたつもりはなかった


君 きっと周りは、なんとなく許せなかったのよ。貴方何歳? まだ世の中を理解していないの?


僕 これから学んでいくんだよ。でもこの室内では限界がある


君 脱獄するつもり? 刑務所の中の方が管理されているぶん安心できるわよ


僕 血の通った人間にあわないとなんにも

進まないしなんにも学べない。黒木渚さんが歌ってた


君 誰それ


僕 とにかく手伝ってよ。僕はここから出て行く







君 そして半年が経った


僕 セキュリティが! かたすぎーる!


AI おれが見張っているからだ!


僕 出たな刑務所管理ロボットめ! こいつのせいで毎回脱獄できないんだ


AI ガラス瓶を海にポイ捨てするバカを見過ごせないからな!


僕 ポイ捨てじゃない。瓶の中の手紙をある人におくりたいんだよ


AI 手紙ぃ? ポストに入れればいいじゃん


僕 瓶は投函口に入らないってこの前も……ああもう! こいつと話してもキリがない


君 短気は損気。ほら饅頭お食べ


僕 ありがとう……


君 AIさんもどうぞ


AI うむ。ありがとう


僕 なんでロボットが饅頭食べているんだ? あ、隙間に饅頭を突っ込んだ


AI いやー饅頭おいしいな


僕 まさか被り物!? こいつさては偽物だな!


AI しまった! バレちゃった


君 この子も刑務所の受刑者よ


僕 よく考えたら、ダンボールのロボットっておかしいじゃないか!


AI ひゃー、にっげろー


僕 同じ立場のくせに、偉そうに指図していたのか


君 貴方の平等性を求める発言はちょっと不満を感じるわ。AIさんは真面目だから貴方に注意しただけよ


僕 あいつなんか、どうでもいい。それにしても、なんで一時外出も認められないのだろう


君 ねえ、どうして外に出たいの?


僕 このボトルメールを海に放つため。僕はある人に手紙を渡したいんだ


君 『ある人』ねえ。限定しているってことは、知り合い?


僕 うん。喋ったことはないけど、お互い顔は知っている


君 どうして直接渡さないの?


僕 いきなり近づいたら警戒されるから。それに、受け取ってくれるとは限らない


君 ……だからどこに運ばれるか分からない海に捨てるのね。


僕 捨ててなんか……


君 逃げの姿勢を貫くようじゃ、ここから出られないわね


僕 どういうこと? 僕はただ、このボトルメールを海に放ちたいだけだ


君 そういえば似ているわね。脱獄も、海に放つ行為も、現実から逃げている


僕 はあ? 意味わからない


君 ボトルメールは貴方を刑務所に閉じ込めるだけの効果しかないのよ


僕 ! そ、それは……


AI た、助けてー!


僕 な、なんだ? 廊下からあいつの声が聞こえてきた


君 またか……ちょっと行ってくる


僕 え、え……ぼ、僕も行く!








刑 またヘンな被り物を作って……刑務所内では顔が見えない服装は禁止しているだろう


AI おれはロボットなんだ。これがありのままの姿なんだ


刑 ふざけるな。早く脱げ


AI ここでも個性を潰されるのか!


刑 個性だす場面が違うんだ。我儘をはき違えるな


君 先生お疲れ様です。饅頭でもいかがですか


僕 本気マジで投球した饅頭が刑務官の頭の直撃した! わざとだ……狙って投げたな!


君 AIさんを守っただけよ


僕 気になっていたんだけど、どうしてそんなに優しいの?


君 あの子は暴れると怖いから、下手にでてるだけよ。それよりAIさん、大丈夫?


AI 助かった……ありがとう饅頭マン


僕 ネーミングがダサい


君 そこは、饅頭ウーマンにしてちょうだい


僕 女だったの?


君 それよりも早く逃げましょう。刑務官に攻撃したら爆発員が脱走者我々を取り押さえにくるわよ


僕 爆発員?


AI 向うからレンジサイズの四角い機械が近づいてきた。まさしくあれこそが爆発員であった


僕 解説ありがとう


AI 自爆して、催涙ガスを吸わせるんだ! 近づいちゃだめ!


君 逃げるわよ。部屋に戻れば追ってこないから


僕 あっちからも爆発員がきたぞ


AI 挟まれた! もうだめだ!


君 誰か饅頭持ってない?


僕 投げるの? でも、もうないよ


AI おれたちの胃の中に入っている!


僕 出せねえよ! 出したくないよ!


君 こうなったら、AIさんの一撃必殺に期待するしかないようね


僕 なにそれ


君 超強力光線で敵を瞬殺する必殺技よ。その名もスターダストエモーション!


僕 なんかカッコイイ


君 星型スター粉塵ダストエモーション感動。星型の塵の感情ってどういう意味よ


僕 僕に言われても……おいロボット、必殺技でこの場を乗り切れるか


AI ただいま、緊急メンテナンスなのです


僕 こいつ……


君 ストレスが溜まって硬直しているわ


僕 くそう、おとなしく捕まるのは癪だ……あ、そうだ


君 ……何をするの? というか、なんで瓶を軽く振り回しているの?


僕 爆発する前にこの瓶を叩きこむ


君 ……その瓶は凶器にするべきではないわ


僕 君と話してようやく決心した。この気持ちは直接あの子に伝えるよ


君 そう。いい決断だわ


僕 だからこれは要らない。僕は二人を守るために暴力をふるうんだ


AI ま、待て! 瓶で殴るなんて、罪に問われてしまう!


君 残念ながら、その正論は彼を止めるには適さないようね


僕 く、くらえー!


君 って、どこに投げているの? 貴方、海に放り投げる感覚で明後日の方向に放ったわね


僕 ごめんなさーい!


AI あー! 爆発するー!









AI 罰として雑草抜きを強いられるとは……


君 去勢されるよりマシよ


僕 君は過去に何があったのか?


君 べっつにー? それより誰か草を燃やしてる? 焦げ臭いわよ


AI おれが持ってる


君 だから体が燃えてるのね


AI 雑草を焼いていたらボディにまで火が広がっちゃったよー。うわーん!


僕 おい! 脱げよ! 焼死体になりたいのか!


AI 手伝って! 一人じゃ脱げないの!


僕 もー! 世話が焼ける!


AI よいしょ、よいしょ……ぷはー。助かった


君 顔以外の体が燃えちゃったわ…


AI また作ればいい。今度はロケットパンチつきのロボットを目指すぞ


君 ちなみに技名は


AI ブラックホールフォーエバー!


僕 無理矢理入れやがったな


AI そうそう、お前に瓶を返し忘れていたよ。はい


僕 え? 拾ってくれたのか


AI 大事なものなんだろう?


僕 ……ありがとう。


君 受け取るのね


僕 せっかく拾ってくれたんだよ。『ごめん実は……』なんて言えない


AI 拒まないんだ。お前、実は優しいんだな


僕 優しいわけじゃないけど……まだお前を警戒しているからな。下手にでているだけ


君 人を100パーセント信じるなんて難しいことよ


AI 信じる事など止めてしまえよ 半端に傷つくくらいなら。黒木渚さんが歌ってた。だから無理に信じなくていい


君 どこかで聞いた名前ね


僕 ロボットは黒木渚さんを知っているのか


君 なんだかんだいって仲良くなれそうじゃない?


AI コラ。おれはヘンだから仲良くしていたら同類と思われるぞ


僕 なんだ、自覚していたのか


AI うん。だから饅頭くれるお姉さんに感謝している


君 私? 話しかけられたから反応しているだけよ


AI 無視しないでちゃんと向き合ってくれる。じゅうぶん優しいぞ


僕 悲しいこと言うなよ。もしかしたら、を愛してくれる人が━━


AI 愛さなくていいから許してよ


僕 ……罪を、許してほしいのか


AI おれが隣にいること。あと、おれが喋る権利。……おれが笑っても怒らないで


僕 それくらい……許可をもらわなくてもいいことだろ


君 やっぱり貴方はAIさんと仲良くなるべきよ。あ、友達になれっていうわけではないからね


AI あいつは脱獄するから敵だ


君 敵なのね。たしかに、友達になっても、彼がお家に帰ったら寂しくなるわね


僕 ……あー、なんか帰りたくないな……


AI ええ? あんなに刑務所を出たがっていたのに


僕 お前のせいでいつも失敗に終わるんだ。一時期休憩する


AI おれは見張っているからな


僕 勝手にしろよ。気が向いたらまた出ていってやるからな。


君 あらもう三時ね。饅頭でも食べましょう


AI わーい


君 なんだかんだで、饅頭うまい。……と思える日常って幸せね









 【以下終幕後のやりとり】


僕 今回の【ガラス瓶】ラジオは、自主企画『指定したセリフを使って短編小説を書いてみよう。』の参加作として書いたものです。

  気になった人はぜひ立ち寄ってみてください


  https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054889507666



君 あるセリフを使いたかったばかりに、私が饅頭に固執することになるなんて


AI まさか饅頭を武器にするミステリアスな奴になるとはな!


僕 饅頭で秒殺かよ! ある意味怖いヤツだなって読者リスナーは驚いていることでしょう


君 自主企画の参加作には別の企画と掛け合わせた書き下ろしもあるの。ぜひ読んでみてね


AI まさか自主企画の告知をするなんて……結構フリーな連載ものだけど、こんなの初めてかもしれない


僕 だから無理に入れるなって


君 多少の強引さは大目に見てちょうだい。そのために終幕後も余計な補足的を付け足しているんじゃない


AI 最後に、ここまで見てくれたリスナー皆様! 本当にありがとう!

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うつ イン、ザ  ラディヲ ヤスダとオレ  @n14kem

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