100万字超えの超大作であります。ええ、10万字ではありません。桁が違います。改題前からたびたび拝読してはいたのですが、最早最初のタイトルが思い出せない(ビキニアーマーだけは記憶にあるのですが……)ほどの時を経て、ようやく読了いたしました。
内容については、ここで多言を費やすまでもないでしょう。異世界転生ラノベのみならず、あらゆる物語を超克せんとするその絶望的な営みの凡てを、長編数十編分に匹敵する文量にて存分に語り尽くしておりますゆえ。
というわけで、以下は追記になります。
その特異な文体に加えて改行が極めて少ないため、批判的な応援コメント(このなんとも逆説的な言い回し!)もついていたかと存じます。が、湧き出る言葉のスピード感を殺ぐような空白はむしろ逆効果。改行だらけの舞城王太郎なんて魅了半減なだけです。
そしてこれは昨今の軟弱な読み手に対する挑発のようにも受け取れるのです。このみっしり詰まった文章の密度に、お前は窒息せず付いてこれるのか? と。
転生者に与えられた理不尽なチートは、ファンタジーを一変させた。
ファンタジーの領域はその能力によって崩壊。欲望にまみれた者たちによって侵略されつつあった。
一人の少女、リアラも転生者であったが、ファンタジー陣営に味方し、どうにかチートの軍勢を防ぐ。だが、それも保たず、一人、また一人と仲間が伏していく――。
そこに現れたのは、一人の女性。
美しい姿をしたその女性は、あられもない、ビキニアーマーに身を包んでいた。
濃厚な設定と展開で繰り広げられる作品は、第一話の時点でかなりのボリューム。緻密に書き込まれているため、読みごたえがしっかりある小説だ。
まだ多くを読んだ訳ではありませんが、この作品にはある種の対立構造が込められていると思いました。敵である異世界転生の特異能力持ちの悪集団は、この世界のことを幻想と呼び、自分たちのことを現実と呼んでいます。
いわゆるチート狩りにカテゴライズされる作品になるかと思いますが、文体や設定などはどちらかというとクラシカルな系統に属するものを感じさせ、昨今の異世界転生ものとハイ・ファンタジーものの対決のメタファーな気もします。
そこまで深読みせずとも、その重厚なボリューム感に圧倒されること間違いありません。ライトノベルの名の通り、軽めが好まれる時代ではありますが、重さと厚みを求める方に是非お薦めです。
この作品は文章が書かれているのとは違う。
物語が描かれているのとも違う。
……世界が創られている。
世界創造。
筆者の綿密な世界観の構築、豊かな描写力、個性的で魅力的なキャラクター達の見事な舞闘。これらが、複雑かつ強固に組み合わされ、まさしく異世界を造りだしている。
言い換えてしまえば、この作品を読むこと自体が異世界への冒険……転生と言えるだろう。
読んでいるうちに自然に、物語という異世界に入りこむことができ、キャラクター達の感情に傍らでふれ、迫力のある戦いを目の当たりにすることができる。
是非、貴方にもこの異世界への冒険を楽しんでほしい。
この世界はそれだけ魅力に溢れているのだから……。
ストーリーはあらすじにある通り転生者の集団を悪として、好き勝手に振る舞い世界を蹂躙する彼等に対する現地人達の反抗、逆襲がメインテーマとなっています。
この作品の魅力は多彩な『キャラクター』と彼等が織りなす熱い『バトル展開』にあると思います。
主人公たるルルヤとリアラは勿論魅力的なのですが、何と言っても敵側に当たる転生者の集団【ネオ・ファンタジー・チートピア】の面々が個性的であり、よくこんなに思いつくなというくらい、次から次へと様々な能力の持ち主が登場します。
特に幹部である『十弄卿』はそれぞれに厨二心をくすぐる変身能力も持っており、この作品の裏の主人公と言える存在です。
彼等とルルヤ達との戦いがこの作品の根幹であり、その掛け合いもバトルも良い意味で厨二病テイスト満載の、白熱必至の仕上がりとなっております。
一話ごとのボリュームは多少長めですが読めない程ではありませんので、古き良き熱いバトル漫画やラノベが好きという人には特にオススメしたい作品です。
本作の「チート」は主人公ではありません。敵です。いわば「逆チート」といったものでしょうか。
したがって、強さで得をするのは基本的に敵です。そして、そんな敵に苦しめられる主人公は通常の敵よりも更に悲惨です。
しかし、もしそこまで圧倒的な力の差がある相手を倒すことが出来たとしたら・・・おそらくその「達成感」は普通の冒険ものの比ではありません。
そして、主人公には復讐という目的があります。
「絶対倒せない相手を倒し、かつ自分の復讐を果たす」
これは爽快感、というよりも「達成感」を味わう話なのかもしれません。そんな新しい分野を開拓した作者に敬意を込めて星3つとさせていただきました。