あとがき
クリスマスソング宅配サービスをお読みいただき、ありがとうございます。
小説を書くようになって以来、毎年クリスマス小説を書き下ろしているんですが。今年のは、直球大嫌い派のわたしにしてはひねりの少ないストレートな話だったと思います。え? 違う? てへ。
さて。本話のテーマは、奉仕(サービス)の再考です。
有料サービス、サービス業という言い方がありますが、わたしはその用語法に疑問を感じるたちです。奉仕は自己犠牲に基づく利他行為を示す言葉のはず。してあげたことに報酬を求めるなら、それは利益の等価交換です。決して奉仕なんかじゃないよなあと。
でもその一方で、わたしは百パーセント対価を求めない奉仕ってのはありえないとも思っています。奉仕した相手から返ってくるものが金銭でなくても、たとえそれが感謝の言葉であっても、それは立派な報酬だからです。
逆に言えば、奉仕する側は相手から有形無形で返ってくる報酬を織り込んでいるからこそ奉仕できるわけで。まるっきり無駄になることが分かっているのに奉仕をするのは、意味がないですよね? それは単なる自虐、奴隷化と同じことですから。
問題は、奉仕する側と奉仕を受ける側との間で、どのくらい与えどのくらい受けるという期待値がしばしば大きく食い違うこと。そのアンバランスが大きくなり過ぎると、貴重な好意や善意が木っ端微塵になってしまうことがあるんです。
村野さんと六人のお客さんとの間で奉仕のバランスが取れていたかどうか。そういう観点から話をもう一度読んでいただければ、全体の印象が少し変わってくるかもしれません。
◇ ◇ ◇
当初、キャロリングというタイトルにするつもりだった本話。有川浩さんが同名のタイトルでドラマ化までされた小説を書かれているのを知って、慌てて全編書き直しました。わたしとしては、子供の頃にキャロリングに出かけた経験なんかも加えてセミフィクションの形にしたかったんですが、しょうがないですね。
その代わり、主人公をわたしとほぼ同年代のおっさんに設定しましたので、彼をとことんイジって元を取りました。主人公としては初めて設定した年齢帯なので、いい訓練になったなあと思っています。
ともあれ。オチが明るい温かい話にしたつもりなので、それを楽しんでいただけたならとても嬉しいです。
BGM:I Want A Hippopotamus For Christmas (Lake Street Dive)
クリスマスソング宅配サービス 水円 岳 @mizomer
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