二人の天才の物語。でも、この物語を書いた作者も、紛れもなく天才だろう

二人の天才がいた。

一人は旧ソ連で、倫理を超えた人体実験を繰り返し、人間兵器をつくりだそうとしていた。
もう一人は日本で、心臓に疾患を抱えた妹を救うために、人生のすべてをかけようとしていた。

二人の出発点は、ともに絶望の底だったろう。
しかし彼らがその絶え間ない努力で進んでいく先に何があるのか。




私は、こんな例を持ち出すのはふさわしくないかもしれないが、この作品を読んでいるときサイモン・シンの「フェルマーの最終定理」を読んだときのような知識の層を潜っていく心地よさと、見えないピースを探して焦がれて、もがきながらも進んでいく強い熱を感じた。

さらにそこに、幾重にも折り重なる人間の愛と信頼の物語が加わってくる。
そんな話が面白くないはずがないじゃないか。
正直にいうと、何回か泣いた。

この作品のジャンルはたしかにSFだろう。しかし、重量級のヒューマンドラマでもある。
どうしてこんなものが書けるのだろう。
素晴らしい物語に純粋に強く心を揺さぶられると同時に、この作品を書ける才能にも嫉妬した。
この物語に出会えてよかったと心から思う。読ませてくれて、本当にどうもありがとう。

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