この作品のもっとも素晴らしい点はストーリーです。
文章も上手いです。キャラクターの配置もいいです。作品として面白いです。でも、僕はあえてストーリーに注目していただきたいと思います。
ストーリーこそ、着想、キャラクターと並ぶ小説の三大要素です。起承転結。あるいは物語の必然的な帰結。それは過去の偉大な作品に共通する必然的な要素であったはずです。
今はなぜか軽視されているストーリー展開を、高いレベルで実現していることこそが、この作品の最大の魅力だと思うのです。
着想と世界設定を考えれば、あとはテンプレ通りにエピソードを重ねていけばいい。そういう小説とは一線を画するものが、この作品にはあります。異論のある方は、読んでみてください。きっと、あなたにも感じるものがあるはずです……。
幼い頃に母が行方不明になった男子高校生・遥。
クリスマスの直前、幼馴染のカナタに「過去に戻れるんだったら、ママに会いたい?」とタイムトラベルに誘われ……。
しかも、タイムトラベル先にいたのは、まだ女子高生の母親で!?
……正直、サブタイトル詐欺だと思いました。
サブタイトルは軽いけど、作者様の技量で読み味も軽めの文章だけど、中身はむしろあったかくて、じんわりきて、エピローグでは思わず涙ぐんでしまいます!
もう、「遥から彼方まで」というタイトルが秀逸すぎる……。
後半に行くにつれ、作者様がノッて書いているのが伝わってくるような文章で、そこに込められた熱が、読んでいるこちらの胸まであたたかく照らすようで……。
読んで損はない作品です。むしろ、読み始めたのなら絶対に最後まで読み切っていただきたいです!
どうぞあなたも、ハルカナコンビと一緒に、素敵なタイムトラベルへ旅立ってください。
ちょっとした希望で、幼い頃に居なくなった母親に会いに行ったはずだったのに。気が付けば、繰り返す時の中に閉じ込められてしまった主人公と幼馴染。
一体何が起こっているのか。
時を超える超技術は何なのか。
何度も何度も通り過ぎた先で、二人は元の時代に戻ることができるのか。
キーとなる、母親や幼馴染との過去の秘密。
そして抱いてしまう恋心や振り回される気持ち。
いくつもの気持ちが詰まって、それが絡み合う構成は素晴らしく魅力的でした。
その先に待っていた幸せを求めて。
届き繋がって行く想いの輪に触れてみて欲しい。
是非最後まで読んで、彼らの想いを見届けて欲しい。
そう思える贅沢なSF青春ものでした。
おすすめです!!
幼い頃に自分の前からいなくなった親に会いたい──
その思いがすべての出来事のきっかけとなり、遥か彼方の未来に幸せな変化をもたらしていくSF(すこしふしぎ)な物語です。
クリスマスイブに、気になる女の子とデートをしていた遥は、地震によって引き起こされたとある事故に巻き込まれます。あわや大惨事となる寸前に遥を助けたのは、幼馴染のカナタ。
けれども、カナタが遥を助けた方法とは、時空移動装置を使って過去に飛ぶという超荒業でした。
飛ばされた先は1999年12月21日。二人は後に遥の両親となる高校生のリムと暁に出会いますが、リムは何故か遥にべったりと迫ってくるという、往年の名作SF映画のようなドタバタ展開に!
ただ、より深刻だったのは、遥かとカナタが未来に戻ろうとしても、必ず1999年の12月21日に戻ってしまうということ。
クリスマスイブの夜までの四日間を延々と繰り返すタイムリープに、世界の終わりの行き止まりへと閉じ込められたかのような焦燥感を抱く二人の心境に徐々に変化が現れてきます。
自分なんていついなくなってもいい。
そんな諦念を心のどこかに持ち続け、優しいけれど無気力だった遥ですが、繰り返す四日間で出会った人達やカナタとのやりとりの中で、未来へと歩んでいきたいと思う気持ちが生まれてきます。
その思いによって、過去の小さな選択から枝分かれしていく無数の未来の中に新しい未来が生まれるはず。
けれども行き止まりでもがく遥は、大好きな母親と過去の世界でたゆたうのも悪くないと思い始めて……
遥を過去に留めようとするリムと、新しい未来へ導こうとするカナタ。
揺れる遥の思いは、繰り返される世界の中でどちらへ傾いていくのか。
親の愛、子の愛、異性への愛、郷土愛。
様々な形の愛に刺激を受けて変わっていく遥の成長とハルカナコンビの未来を、あなたも「観測者」の視点で見届けてあげてください(^^)
まるで劇場版アニメを一本観終わったかのような読了感が得られる、映像の喚起力に溢れたエンターテインメントSF小説だと思います!
その中核をなすのは「親子愛」であり、ぜひご家族揃ってご覧頂きたいと思いながらも、性描写があるからなぁと思い直し、いやいや、それがなければ親子も何も存在しないわけで、なるほど、だからこその性描写なのかと新たな発見もあり……ともあれ、本作の面白さは特異なシチュエーションを楽しんで終わりというものではありませんから、どうかじっくりと、最後までお楽しみ頂ければと思います!
……といっても、前述の通り「エンターテイメントSF小説」なので、どこか懐かしいSFネタの数々を楽しむのもありだと思いますし、何より、遥とカナタ……「ハルカナコンビ」の活躍を見守る楽しさを、ぜひ味わって頂ければと思います!
本作には様々な「親子愛」が描かれていますが、一番の親バカは他ならぬ作者だと思いますので、生みの親かからそこまで愛されている『遥かから彼方まで』は、とても幸せな子供だと思います!
本作を読んで得られる感動は、そんな「親子愛」のお裾分けなのかもしれません!
キャラクター愛がすごいです。
でも作者が抱く、どこか世界に対する憂いのような視点を全編を通して感じました。
ディストピアのようなざわりとした感触を時々感じながら、この不可思議な物語は進んで行きます。
その世界に真っ向から抗うのではなく、世界の形を受け入れながら、超えていくものは人が繋ぐ想いだけだと言うように。
時に人物に執拗に寄り添う姿勢が貫かれますが、エピローグでは見事に、それまで織りなされた時間の行き着く先を見せて頂きました。
この静かな感動は、タイムトラベル、ループ、SFをハルカナと共に越えて来なければ、味わえないものだと思います。
多くの謎が転がっているお話なので、ミステリー派としては、もっとハトから情報引き出せよ、今のちょー引っかかる台詞、もっと気にした方がいいんじゃ・・と思う点がわりとスルーされたままな所に、余計に不安感を煽られた気がします。
これから読まれる方は、色々とハラハラすることでしょう。
あと、本編とエピローグの暁さんがギャップ萌えです。
よく考えると別れの多い物語です。
それでも未来に微かに、たしかな明かりの灯る物語でした。