奇抜な構図の破壊と再構築。そして、新たな破壊。

第十四話までを読んでのレビューとなります。

「ごめんなさい。逃げます。探さないでください」という手紙から始まる物語は、昨今主流になりつつあるファンタジー作品の様に奇をてらったものの様に思えるが(とは言っても、自分があまりファンタジーを読まないので流行について行けているかは不明だが)、話を読み進めていく内に、昔ながらの丁寧なファンタジー作品の上に成り立っているコメディー作品である事に気付く。

そんな始まりなので、東の魔王ことアレフィオスを追う物語になるのかと思ったが、そうではない。アレフィオスは序盤ですぐに姿を現わすのだ。
そして勇者のリュースとその御一行の中の一員に取り込まれる。

作品の構造がステレオタイプな「魔王という敵を倒す」ではなく、「魔王を助ける勇者」という構造になる様に思えるのだが、作品内の王族の動きや、リュースとその姉的存在エリシアの過去、魔王という存在の秘密など散りばめられた伏線によってはストーリーはまた構造を新たにする予感がしてならない。

物語のジャンルにあるコメディーすら最後はひっくり返してしまうのではないかと思える作品で、これからの展開にも目が離せない。

最後に、文体や描写が丁寧で大変読みやすいのが良い。
しかしながら、一つの話内での視点の変更などがある所が、昔気質なもしくはライトノベルに慣れてない層には違和感を覚える可能性がある様に思う。

※追記
最後まで読んでの感想。
以前書いたレビューの内容の通り、コメディと言う枠内に収まらない作品に仕上がっている。
コメディからの落差のせいだろうか、登場人物たち一人一人が掘り下げられていく度に感極まってうるうるしてしまう。
ズルい。いい意味でだが、これはズルい。
ネタバレになるから詳しくは読んでみて欲しいのだが、彼らはこれからも成長していくのだろう。
その成長の中で、リュースやアレフィオスとその愉快な仲間たち(王族メンバーたちも)はまだまだ一悶着も二悶着もしていくのだろうなと想像して、それだけで笑えてしまう。
それは結局のところ、やはりコメディでもあり続けているからだろう。

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