この世に在るものも無いものも、全てを観察し、考察し、論理を導く……。そんな「哲学者」が勇者のパーティにいたら? という物語。
実在の哲学者の考えやを魔法に変えて戦う人物が登場するお話です。
最初この話をTwitterでお見かけした時は「難しい話をどうWeb小説に(しかもコメディっぽく)落とし込むのかな」と思っていましたが、見事な手腕……! ちょっと聞いただけでは分からない用語、聞いたことはあるけどよく知らなかった用語、それらが「哲学魔法」として噛み砕かれているので「そういうことか!」という発見の連続でした。「エウレカ!」ってやつですね。
哲学用語が分かりやすいので哲学入門者にも、哲学を一度学んだけど学び直したいと思っている人、いえ、それだけではなく、単純に「面白い話が読みたい!」という人。
どのニーズにも応えます。
哲学×ファンタジー、至高な思考の物語にあなたも入門してみては?
まず一言言えるのはもう老若男女、更には倫理受験予定の受験生に至るまで。
全ての方におすすめしたい。
テンプレ云々に飽きた! と言う方にもおすすめです。これ以上無い程主人こ――おおっと、ここからは本文で! ですよー!
さてさて本題。
果たして何も考えずに突っ込むのがファンタジーの総てでしょうか。
確かに戦略は大事。
何処が弱点? 防御はどれ位必要?? 相手の残りHP、MPは??
でも――?
戦闘中にこの敵は存在してるかなんて難しい事を考える必要はあるの?
死にどう向き合うかについて皆で議論する??
そこを考えると、そんなもの知らん!! に辿り着くのが一般的かもしれません。
――しかし。
この話。見事にひっくり返してくる!
と言うか寧ろ「哲学」が無ければこの話は始まらない!!
まずですね、星の推しのアイクくんって子が居まして、その子がめちゃくちゃ変わってる子なんですけど、ある時、突然ですね、考――おおおっと! ここからは本文ですよー!!
先ずは騙されたと思って一頁読んでみて下さいな!
一気に引きずり込まれます。
星は少なくともそうでした。
好奇心が枯れないそこの貴方なら。
この一風変わった魅力たっぷりのファンタジーに惹かれるはず。
さあ! 貴方も今日から!
知の探求を求めてやまないこのパーティーの一員です!!
哲学の基本は、概念を、そして意味を突き詰める事。
それによって示されるのは、この世の理屈も限界も超越した可能性。
しかし哲学は、多くの人間から敬遠される。
何故なら哲学は『今』役に立つ事が非常に少ない。
神は居るか居ないか? 人間の意識は何処にある? この世界の真理とは?
そんなことを考えたところで、実際の生活には何の役にも立たない……。
そうではないのだ、という事を、この作品は如実に示すことに成功している。
魔法という形で『目に見える』状態にされた哲学の思想は、いずれ科学によって実現され得るあらゆる可能性を浮き彫りにしている。哲学という一見何の役にも立たない思想を、魔法という形で親しみやすく転換する事で、その理解に大きく貢献している。
それは哲学の入門としてこれ以上ない導入では無いかと、僕は考える。
勿論、ファンタジー作品としても非常に質が高い。
その性質上いわゆるチート系に含まれるのだが、構成・設定共に確実に作り込まれており、変に思える部分はほぼ無いと言って差し支えない。哲学に興味が無くとも楽しめる内容だと断言できる。
哲学、という言葉で敬遠せずに、是非読んでみて欲しい作品だ。
魔法剣士、白魔術師、弓使い……とここまではさほど珍しくないパーティー構成。しかし最後に加わったのは、まさかの戦闘職でも補助系の職でもなく「哲学者」!
さて、哲学者の子はなんと、自らの思考を具現化する「哲学魔法」を扱うことが出来た。しかし彼は良くも悪くも様々な問題を巻き起こす……
ストーリーが面白い。テンポよく話が進んでいきます。哲学魔法は実際の哲学を解釈し、それに沿った効果を発揮しています。個人的には「イデア」が好きです。さらに、エピソード毎にその回で取り扱った哲学についての解説もあります。
※真面目な話、この作品の解説はセンター倫理に役立つと思います。というかここに出てるようなこと、何問か本試験で解いた記憶がある(旧カリ最後の方だけど)。あぁ、私が高校生の時に読みたかった