高濃度の人間関係と、綿密な計画、そして医療知識満載のミステリー‼

 今回も見事だ。もはやラノベの域を超え、大衆小説と言えるだろう。長編なのに、ストレスなしに読み進められる、ハイクオリティ・本格医療ミステリーだ。
 今回の舞台は刑務所。そこで服役している青山という男と、主人公が出会うところから物語は動き始める。青山には他の服役囚とは違った様子が見受けられた。いかにも、囚人らしくないのである。このことが気になった主人公は、青山の犯した罪を調べ始める。そこに登場し、協力してくるのが、個性豊かな面々だ。警察や同じ刑務所の医師たち、そしてこの作者様の読者ならきっと驚くアイツまで……。
 青山が犯したとされるのは、ただの殺人ではなく、死体から臓器を取り出すという猟奇殺人だった。そして何の符号か、青山自身も臓器移植の手術痕があった。
 そして、次の殺人事件が起こる! 
 青山の妻とその子供。警察。刑務所。そして病院。人間関係は複雑に絡まり合い、接触回数でその濃度は濃くなっていく。綿密な計画によって隠された本当の犯人とは? 今回は医療知識だけでなく、刑務所の知識、警察の知識まで網羅された作品となっており、読者を引き付けてやまない作品だと言える。
 そしてこの作品をより楽しむために、この作者様の別の作品も是非、ご覧いただきたい。そうすれば、あの作品のあの彼の後日談としても読むことができるからだ。いつでも本格医療ミステリーなのだが、今回はさらに磨きがかかっている。
 これを読まずに、今回のコンテストを終えるのはもったいない。

 是非、ご一読ください。

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