エピローグ
「本当に陸斗はNISEMONOだったんですかね?」
消化しきれない事実が次々となだれ込み、大河を追い越していく。大河の弱々しい言葉を優しく律子は包み込んだ。
「今はゆっくりと進みましょう。ほら、紅葉が綺麗よ」
カウセリングルームの窓から見える紅葉を律子は眺める。律子の言葉は聞こえていたけれど、そんな気分にはなれなかった。
「なんで陸斗の遺体が札幌なんかで見つかるんだよ」
いつもの敬語口調は崩れ、心から漏れたような大河の嘆きに対して、律子さえも言葉をつまらせた。
そう、NISEMONOはまだ終わっていない。その事実はこの学校にいる誰もが感じていた。また、どこか知らない土地で、ここで起きたような悲劇を再び生み出すのかもしれない。
それも、NISEMONOは直接手を加えずに、人々の心を破壊していく。そう考えたら、いてもたってもいられなかった。
「僕はもう二度とこんな思いをしたくない。律子さんどうしたらいいですか?」
律子は優しく微笑んだ。それはいつも見せているような温かいものではなく、どこか悲しみが含まれていた。
「あと、少しで卒業じゃない? そうしたら、いいこと教えてあげる。これは美咲さんとの秘密だったけど……特別にね」
大河は小さく頷いた。
――ただいま、入りましたニュースによるとNISEMONOと名乗る人物から犯行予告が出ています。
<了>
NISEMONO 海岳 悠 @insharuS
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