必死に頑張る勇者と、それを見守るハチャメチャな「地の文」による掛け合いが面白おかしい冒険(?)です。
書いていることがすぐ変わったり、支離滅裂な、筋の通らない展開に変わったり、気分で砂漠に放り出されたり。
書き手、あるいは読み手として「その展開はまずいでしょう」というような展開に天使の気分で変わっていく……。
普通ならそこで読者が離れてしまうところですが、このお話は一味違います。
何故なら、そこに直接被害を受けて振り回される勇者がいるから!
彼も自分の世界へ戻るため、とても頑張って話についていこうとするのですが、そのうち天使の態度も変わって――。
果たして勇者は無事「日帰る」ことができるのか。
コンテストで結果を出して罰を逃れることができるのか。
思わず笑ってしまう、楽しい作品です。
セリフと地の文のかけ合いが巧みなメタ異世界小説です。
〈『世界とは物語』で『物語のない世界は世界ではない』〉という設定が十全に活かされ、とにかく勢いで読ませます。1万2千字が一瞬に感じられる読みやすさと軽快さはさすがです。
そして異世界系Web小説を戯画化したようなストーリーでありながら、読み進めるうちに気づけばきちんと勇者を応援し、天使には諦めるなとエールを送りたくなっているという作劇の妙――。
数多ある異世界ものにおいて、小説やゲーム世界に主人公が転生/召喚する作品はもはやジャンル化して久しい感がありますが、本作品のようにその物語世界の「つくり手」「書き手」さらには「読者」をも意識したものはまだ稀少なのではないでしょうか。
おススメです!
ボンゴレ★ビガンゴ先生の作品は勢いと超展開とメタで出来ています。
作品を読む前にこのレビューをご覧の方、是非ご自分に20分ほど空き時間がある事を確認してからお読みください。
浴びせられる展開と台詞をいちいち考えてはいけません。感じてください。
この物語と同じスピード感で走り抜けてください。
読み切って賢者モードになっているレビュアーからいえる事はこれだけです。なんか、悔しいよ、夢中にさせられたよ。
そして、あなたがもし物語を考える人であったなら、エタりそうになった時、この物語に戻ってきて最後から少し前の文章を読み返してください。
必ずや力になってくれることでしょう。
と、見え透いたきれいさで締めくくらせていただきます。
これは、物語の書き手である天使ちゃん(地の文)と物語の登場人物である勇者(会話文)が織り成す掛け合い漫才みたいなお話です。
物語が上手く書けなくてだんだんメンヘラっぽくなっていく天使ちゃん(リスカはあかん!!)は、勇者にめちゃくちゃツッコミを入れられます。
でも、あまりメンタルが強いほうではない私は、天使ちゃんにけっこう親近感を抱いてしまったり……(^_^;)
ネットに小説を載せていて「どうせ自分の作品なんて誰も読まへんのやぁ~!( ノД`)」と思ったことは一度や二度ではありません。たぶん、100回ぐらいは思ったかも(←え……)
しかし、自分だけの物語である登場人物たちは、この小説の勇者のように物語がちゃんと終わってくれることを望んでいるはず……。
ゲラゲラ笑いつつもそう深く考えさせてくれる作品でした。
あと、天使ちゃんが最後にちゃんと成長してくれたのがgood!(*^^*)
序盤で「ふいんき(なぜか変換できない)」とか書いていた彼女ではもうありません。きっと、新作で楽しい物語を執筆してくれることでしょう。
天使ちゃん先生の次回作にご期待ください!!
地の文(三人称)に人格を持たせたらこうなる、という反則技ファンタジー。
天使の趣味がウェブ小説執筆というのもぶっ飛んでいますが、エタった(途中で連載が止まること)小説を完結させるために読者が作中で続きを演じることになる、という経緯がユニークです。
天使の書いた「地の文(ナレーション)」に従って読者は動かなければなりません。
が、天使はもともとエタっちゃうような根性ナシですから、だんだん文章もヤル気がなくなって、支離滅裂になって行くんです。
そんな中でも読者は必死に物語を続けようとしていて……両者のギャップに笑いました。
異世界召喚の理由付けを、こういう形で処理したのは邪道ですが、面白い試みだと感じました。イロモノ、キワモノではありますが、着眼点と発想に高評価です。