第5話 生きる意味
久しぶりに私が緑色の血を流している。私は魔物に捕まえられていた。そして、魔王が目の前に近付いて来る。私の息はあがっていた。雨が降りやまない。魔王が何かを喋っている。しかし、言葉がわからない。つばを魔王に吐いてやった。つばには緑色の血が混ざっていた。
魔王は私を指差した。もうこれでおしまいだ。魔法がきっと私の心臓を貫くだろう。私は目をつぶった。愛しいあの人の元へ私は行けるのだろうか。戦場が静かになる。私はゴブリン、一度は死んだこの身は再び死へと向かう。さよなら、この世界は私を弄んだ。もう苦しむこともない。
その時だった。村人たちが魔王に向けて石を投げ始めた。それを見た人間の兵士たちも魔王に弓矢を放ち始めた。魔物の手がゆるんだ。私はその一瞬を逃さなかった。魔物から脱出して、魔王に切りかかる。私は、私は、私は‼ 人間のあの人を殺した人間が憎い‼ 同族で私を追い出したゴブリンが憎い‼ 何より‼ この世界の差別が憎い‼
私は魔王の首を切り落としていた。それから、人間たちの歓喜の声があがり始め、私はこの大地に力なく倒れた。
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