第3話 人間の子ども

 数日たってから森の前に、人間の男の子と女の子がやって来た。私は木から降りて二人の目の前に姿を現した。女の子はびくっと体を震わせる。男の子は石と棒を手にした。面白い、人間の男の子は勇敢のようだ。私は剣を抜いた。男の子は顔が恐怖に押し潰されるようだった。


 私は静かに二人へ近付いた。そして小さな花を手渡した。これで友好的だとわかるだろうか。男の子と女の子は顔を見合わせている。それから二人は私の顔を見て笑顔を浮かべる。そうか、ゴブリンを怖がらない人間の子どもなのだな。しかし、この子どもたちもいずれはゴブリンを殺すのだろう。それなら、今、ここで……。


 すると遠くの人間の村から火と悲鳴が上がっていた。私はじっと村を見つめた。あれは魔王の手下のようだ。この子どもたちは泣いている。私は二人の頭を撫でてから、急いで村へと駆けた。なぜ、私が人間を助ける必要がある? もちろん、ない。けれども、この剣に誓った。私はいつか生きる意味を見出だすと。


 村では魔物たちが人間を追いかけまわしている。私は上空へと飛んだ。そして着地と同時に魔物の頭に剣をぶっ刺した。他の魔物たちが襲いかかってくる。それを私はものともせずに剣で切り裁いていく。まるであいつと共に戦っているみたいだ。魔物がばっさばっさと倒れていく。私は遠くに確かに見た。魔王がこちらの様子をうかがっているのを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る