第9話 怒り

 人間を助けてやれなかった。目の前に広がる赤い血の海を私は全神経を集中して見た。沸き上がるのは何か? 私の心に沸き上がるのは何か? 立ち上がって振り向く。見るもむざんな人間の死体。そしてバーサーカーを見る。相変わらず大声をあげている。ムカつくんだよ、お前って奴は。私の緑色の血が騒いだ。


 それからの私はバーサーカーを血祭りにあげた。右手を切り落とすじゃ飽き足らず、左手、右足、左足を切り落としてやった。バーサーカーが身動きが取れなくなっている。観客はどよめいている。さて、お前が殺した人間はどんな奴だったか? きっと地獄でお前を待っているだろうよ。私はバーサーカーの頭部を胴体から切り離してやった。


 それからのことは覚えていなかった。私は恐怖の眼差しを受けながら街を出た。助けてやれなかった。私の中で取った行動は正しかったのか? それを自分に問う。私はゴブリンでありながら、人間に助けてもらった身である。だから、私はこの剣を形見にくれたあの人も思う。私は悲しい生き物だな。

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美女ゴブリンは振り向かない 野口マッハ剛(ごう) @nogutigo

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