美女ゴブリンは振り向かない

野口マッハ剛(ごう)

第1話 人間

 肌を見つめる。なぜ私の肌が緑色なのかはわからない。この世界に生を受けてずっと緑色。両親は遠い地で平和に暮らしている。これからも様々な色の血を見ることになるのだろう。生き残るためには戦うしかない。相棒のこの剣を大事にしている。人間からもらった。私の密かな片思いの相手が人間だった。この世界には差別がまだ色濃く残る。種族という違いは差別を先に生んだ。


 いつからだろう、肌の白い種族、人間が好きになったのは。この剣の持ち主は元々人間の男。そいつは私の目の前で殺された。私をかばった罪で、だそうだ。人間は理解が出来ない。同じ種族で殺し合いをするから。人間はとてつもなく強い。だから人間同士で殺し合う。理解が出来ない。


 私を守るのはあいつがくれたこの剣だけ。わかっている。人間に恋した罪は大きい。その愛した人は直接は守ってくれない。でも、人間の言う天国からそいつが私を見守ってくれるなら、私は魔王すらも殺してみせるだろう。一匹ゴブリンの名は伊達じゃない。私は今、血に飢えている。


 さて、旅人一行が森に入ってきた。相手は人間、さぁ、狩るか。

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